院長コラム

早めに閉経になられた方は、早めにホルモン補充療法(HRT)の検討を

日本女性の平均閉経年齢は約50歳ですが、早めに閉経を迎え、血中エストロゲン濃度が低下している期間が長いと、様々な疾患リスクが高まることが知られています。
今回は、「エストロゲンと女性のヘルスケア」(メジカルビュー社)を参考に、早めに閉経になられた方の問題点と対策について説明します。

 

 

閉会が早まることによるリスク

エストロゲンが低下すると動脈硬化になりやすくなり、閉経年齢が早いほど動脈硬化性の疾患が増加することが知られています。あるアメリカの研究では、46歳未満で閉経になられた方は、動脈硬化による心疾患や脳卒中が約2倍に増加したそうです。
また、骨密度を維持していたエストロゲンが低下すると、骨が次第に溶けて骨粗しょう症のリスクが高まり、そのまま放置すると骨折をきたして将来寝たきりになる可能性があります。
女性の場合、これらの疾患は加齢による影響だけでなく、閉経後の年数とともにリスクが高まります。

 

両側卵巣摘出術と喫煙

早めに閉経を迎える要因に、両側卵巣摘出術があります。閉経前に両側の卵巣を摘出すると、エストロゲンのレベルは急激に低下します。特に40代前半に両側卵巣摘出術を行うと、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの疾患が多くなるといわれています。更に、自然閉経後と比べて両側卵巣摘出後の方が、骨密度減少率が高いとの報告もあります。
一方、喫煙も閉経を早めることが知られています。タバコに含まれる成分が卵細胞を障害し、閉経を早めるといわれており、1日20本以上の喫煙は1~4年も閉経を早めるそうです。喫煙自体が血管の老化をもたらしますが、閉経を早めることで更に動脈硬化のリスクが高まります。喫煙期間が長いほど卵巣への悪影響が高まりますので、喫煙されている方は閉経前の早い時期に禁煙するようにしましょう。

 

禁忌でなければ早めのHRTを

エストロゲンが欠乏した期間が長ければ長い程、血管や骨へのダメージが進行します。そのため、自然閉経後あるいは両側卵巣摘出後は速やかにHRTを行うことをお勧めします。一旦動脈硬化が進行してしまうと、HRTによる改善は期待できず、かえって血栓症のリスクを高めてしまう可能性があります。

 

 

自然閉経を迎えた方あるいは両側卵巣摘出された方は、動脈硬化・骨粗しょう症予防のため、食生活の改善や運動習慣を心がけることは、もちろん大切です。
その上で、是非早期のHRT開始をご検討下さい。
特に40歳代で閉経になられた方には、禁忌でない限りHRTを強くお勧めします。