院長コラム

新生児に対するビタミンKの投与について

ビタミンKは血液の凝固に大切なビタミンであり、新生児には不足しがちです。ビタミンKが欠乏すると出血しやすくなるため、出生後、赤ちゃんにビタミンKを投与する必要があります。今回は「周産期医学 2019年5月 周産期と医療安全」(東京医学社)などを参考に、新生児に対するビタミンKの投与について説明します。

 

ビタミンKを投与する理由

ビタミンKは、母体から胎盤を通じて胎児へ移行する量は少なく、母乳中の含有量も多くありません。しかも、母親の授乳量や胎児の哺乳量は個人差が大きいため、何も対策を取らなければ、ある一定の確率で新生児にビタミンK欠乏が認められることになります。

ビタミンK欠乏性出血症の症状として、皮膚や消化管の出血が挙げられますが、重篤な場合は予後不良の頭蓋内出血を発症することがあります。そのため、赤ちゃんの健康を守るためには、ビタミンK欠乏を予防することが重要です。

ある調査によると、新生児ビタミンK欠乏性出血症の全例がビタミンK投与歴はなく、ビタミンK予防投与歴のある新生児では、新生児ビタミンK欠乏性出血症を認めなった、とのことです。このことから、出生後のビタミンKの予防投与は有効であると考えられており、日本小児科学会、日本産科婦人科学会などでは強く推奨しています。

 

投与方法

我が国で推奨されているビタミンK予防投与は、以下に示す3回投与です。

1回目:出生後、数回の哺乳によりその確立したことを確かめてから、「ビタミンK2シロップ1ml(2mg)」を経口的に1回投与します。

2回目:生後1週または産科退院時のいずれか早い時期に「ビタミンK2シロップ」を前回と同様に投与します。

3回目:1か月健診時に「ビタミンK2シロップ」を前回と同様に投与します。

ちなみに、当院での2回目の投与は、お母さんが初産の場合は5日目、経産の場合は4日目の退院日に投与しています。
また、赤ちゃんに血便がみられた場合は、念のため「ビタミンK2シロップ」を追加投与し、改善せずに悪化した場合は新生児科へ紹介しています。
尚、出生後3か月までは週に1回「ビタミンK2シロップ」投与している施設もありますが、
今のところ当院では行っていません。

 

退院後のお母さんには、乳汁中のビタミンK含有量を増加させるために、ビタミンKを豊富に含む納豆や緑葉野菜などを積極的に摂取頂きますよう、宜しくお願い致します。