院長コラム

妊婦さん、授乳婦さんはイソジンうがい薬の長期使用を控えましょう

風邪の予防や咽頭痛などに対して使われることが多い「ヨード(ヨウ素)」を含むうがい薬(イソジンうがい薬など)ですが、「新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ可能性がある」との情報が広まっているため、症状がなくても日常的にイソジンうがい薬でうがいしようと思っている方もいらっしゃるかも知れません。
今回は、妊婦さんや授乳婦さんのヨードの過剰摂取と赤ちゃんの甲状腺機能低下について、情報を共有したいと思います。

 

甲状腺ホルモンとは

甲状腺は首の前方にある4cm程度の臓器で、甲状腺ホルモンを合成・分泌しています。甲状腺ホルモンはタンパク質、脂肪、炭水化物の代謝を促進させ、活動に大切なエネルギーを作り出すほか、体の成長にも欠かせないホルモンです。

甲状腺ホルモンは海藻などに含まれるヨードを材料に作られるため、ヨード摂取量が不足すれば甲状腺ホルモンが低値になりますが、反対にヨードを過剰に摂取し過ぎた場合でも、ホルモンの合成に支障をきたし、甲状腺ホルモンの分泌が低下します。

 

甲状腺機能低下症の症状

何らかの原因によって甲状腺ホルモンが低下している状態を甲状腺機能低下症といいます。甲状腺ホルモンの分泌が少ないと代謝が低下するため、新生児の場合は「元気がない、哺乳不良、体重増加不良、便秘、手足の冷え」など、様々な症状をきたします。

 

妊婦さん・授乳婦さんがヨードを過剰に摂取すると

お母さんがヨードを摂取すると、妊婦さんの場合は胎盤を通過して胎児へ、授乳婦さんの場合は母乳を介して赤ちゃんへヨードが移行します。お母さんの摂取が過剰であれば、多量のヨードが胎児や赤ちゃんの甲状腺に蓄積されるため、甲状腺ホルモンが十分に合成されず、甲状腺機能低下症を引き起こす危険性があります。

海藻などの食品から適度に摂取する分には問題ありませんが、ヨードを含むうがい薬を漫然と使用すると、かなりのヨード摂取となることが知られています。妊婦さん、授乳婦さんが風邪予防でうがいをする場合は、水で十分と考えます。咽頭炎などの炎症を抑えたいときには、ヨードを含まない「アズノールうがい液」などをお勧めします。

 

 

“内服薬”による赤ちゃんへの影響を気にされる妊婦さんや授乳婦さんは多いですが、“うがい薬”の影響も気にされる方は少ないかも知れません。
短期間であれば問題ないと思いますが、できれば妊娠中・授乳中は「ヨード」を含むうがい薬の使用は避けるようにしましょう。