院長コラム

授乳中、アルコール・たばこ(加熱式たばこも)は控えましょう

妊娠中は控えていた飲酒や喫煙ですが、分娩後に再開する方もいらっしゃるようです。
結論を言えば、少なくとも授乳中飲酒は控え、タバコは授乳の有無に関わらずやめましょう。
今回は、国立成育医療研究センターの先生方がお書きになられた「妊婦・授乳婦のための服薬指導Q&A」などを参考に、授乳中の飲酒や喫煙の影響について説明します。

 

 

授乳とアルコール

授乳中の母体が摂取したアルコールは、赤ちゃんの脳細胞や性ホルモンを産生する臓器の機能を低下させるなど、母乳を通じて多大な影響を与えます。また、母乳産生量が一時的に低下するともいわれています。

アルコールの種類や量により異なりますが、一般的に飲酒後の血液や母乳中のアルコール濃度は30分から1時間程度の比較的短時間で最高値に達するといわれています。また、血中のアルコール濃度が下がるのには、飲酒後1~2時間はかかります。

ただし、これらの数値には個人差があるため、授乳中のアルコール摂取については明確な安全基準はありません。当院としては、「授乳中の飲酒は原則禁止」と考えています。しかし、ごく少量飲んでしまった場合やアルコールが含まれた食事やスイーツを摂取した後は、2時間程度授乳を避けることをお勧めします。

尚、「慢性的な飲酒や過剰摂取では、授乳禁止とする」という考えもありますが、それは本末転倒であり、授乳を優先して飲酒を避けるようにしましょう。

 

 

授乳とたばこ

授乳中に母体がたばこを吸うと、約3倍の濃度で母乳に移行し、半減期は約2時間もかかります。また、血中のプロラクチン濃度が低下し母乳の分泌量が低下するといわれています。

赤ちゃんへの影響として、早い離乳、哺乳量の低下、体重増加不良、不眠、下痢、嘔吐などがありますが、中でも乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが有意に増大し、非喫煙者に比べて5倍以上高くなると報告されています。

もちろん、「紙巻たばこ」だけでなく、「加熱式たばこ」もニコチンをはじめ多くの有害物質を摂取することになるので、「同罪」と考えて下さい。

 

 

受動喫煙が児へ及ぼす影響

乳児の周りで喫煙すれば、母乳からの影響だけでなく、当然受動喫煙の影響を受けることになります。

ある研究によれば、SIDSの増加、喘息・呼吸器疾患・中耳炎の増加、身長の伸び率の低下、知能発達の低下、注意欠陥・多動性障害の増加、虫歯の増加、成人後の発がんの増加など、受動喫煙が多くの悪影響を引き起こすと報告されています。

SIDSに関して言えば、父親が喫煙者であるだけで3.5倍、父親が乳幼児と同じ部屋で喫煙すると8.5倍もSIDSのリスクが高まりとの報告があります。つまり、母親だけでなく、父親も禁煙することが非常に大切です。

ちなみに、受動喫煙はたばこの副流煙だけで生じるものではありません。吸った人から吐き出される呼出煙によっても受動喫煙は生じます。「加熱式たばこ」では呼出煙が見えづらく、臭いも少ないためわかりづらいですが、「紙巻たばこ」と同等の有害物質が排出されます。やはり「紙巻たばこ」と「加熱式たばこ」は同罪です。

 

 

妊娠を契機に母親は禁酒・禁煙すること、授乳中の母親は禁酒・禁煙を継続すること、父親も禁煙することが、ご家族皆さんの幸せに繋がります。赤ちゃんのため、ご家族のため、そしてご自身のために、是非乗り切りましょう。