院長コラム

子宮頚がん検診Q&A

先日、東京都医師会から「日々の診療に役立つ がん検診Q&A」という冊子が発行されました。
今回は、その中から「子宮頚がん検診」について、情報の一部を共有したいと思います。

 

 

Q1.世田谷区における子宮頚がん検診の対象は?

世田谷区の子宮頚がん検診は20歳以上の性交経験者を対象に行われています。年齢の上限は設けていませんが、海外では60~70歳を上限としている国もあります。
ちなみに当院では、長年の検診で異常がない方に対しては、70歳で区検としての子宮頚がん検査を“ご卒業”としております。

 

 

Q2.精密検査の内容は?

子宮頚部細胞診の結果、NILM(陰性)以外の方は精密検査に回ります(保険診療)。
扁平上皮系の場合、ASC-US(軽度扁平上皮内病変疑い)に対しては、発がん性が高いハイリスクHPV感染の有無を確認します。その結果、陽性であった方には、拡大鏡検査(コルポスコピー)および組織診を行ないます。

細胞診の結果で軽度から中等度異形成が疑われる場合は、当院でコルポスコピーおよび組織診を行ないますが、高度異形成以上の病変が疑われた場合や腺細胞系の病変が疑われた場合は、高次施設(東京医療センター、東邦大学医療センター大橋病院など)へ紹介致します。

 

 

Q3.子宮頚がんとHPV感染の関連は?

多くの女性(約80%)は一生に一度、ハイリスクHPVに感染しますが、約90%の方は免疫力でウイルスを排除します。しかし、感染した約10%の方はウイルスが細胞内に共存する持続感染となり、病変が軽度異形成、中等度異形成、高度異形成、上皮内癌へと進んでいきます。

尚、異形成から浸潤がんに進む確率は、軽度異形成では1%程度、中等度異形成では約10%、高度異形成では約20%と言われています。

 

 

Q4.HPVワクチンを摂取していれば子宮頚がん検診は必要ありませんか?

必要です。

ハイリスク型HPVは約15種類が知られており、その中で特に悪性度が高いのが16型と18型です。わが国で摂取ができるサーバリックスとガーダシルの二種類のワクチンは、どちらも16型と18型に対応しているため、しっかり摂取した方であればこの二種類のタイプを約100%予防することは可能です。ただし、それ以外のHPVにはほとんど効果がないため、現在のHPVワクチンで子宮頚がんを予防できる確率は約60~70%と言われています。したがって、HPVワクチン接種歴がある方でも子宮頚がん検査は必要です。

つまり、「HPVワクチン」という一次予防と「子宮頚がん検査」という二次予防の二つが車の両輪である、という認識が大切です。

 

 

Q5.日本ではHPVワクチンの積極的勧奨が中止されたままの状態ですが、摂取は可能ですか?

可能です。

日本におけるHPVワクチン接種後の有害事象(慢性頭痛、運動障害、起立性調節障害など)に関して、国内外で多くの解析が行なわれていますが、症状とワクチン接種との因果関係を証明する化学的根拠はありません。HPVワクチン接種された方で、10万人当たり約28名の方に症状がみられましたが、HPV摂取歴のない方でも10万人当たり約20人に同様な症状が出ました。

政権与党の政治的な思惑で、未だに厚生労働省の積極的勧奨は中止のままですが、もちろん接種することは可能です。世田谷区の場合、小学6年生相当から高校1年生相当の年齢の女子は、無料で接種することができます。当院での接種をご希望される方は、お電話で日程の予約と、サーバリックス(2価:子宮頚がん予防のみ)とガーダシル(4価:子宮頚がんおよび尖圭コンジローマの予防)のどちらをご希望されるか、お伝え下さい。

 

 

今、「Think clearly」(ロルフ・ドベリ著)という本がベストセラーになっています。この本には、良い人生を送るために必要な様々な思考法が書かれていますが、その中に「賢明さとは“予防措置”を施すことである」という一節があります。
また、「頭のいい人は問題を解決するが、賢明な人はそれをあらかじめ避けるものだ」という、アインシュタインの言葉も紹介しています。
子宮頚がん一次予防である“HPVワクチン接種”と二次予防である “子宮頚がん検査”。皆様、そしてお嬢様には、是非これら「二つの賢明な行動」をとられますよう、宜しくお願い申し上げます。