院長コラム

慢性外陰部痛と不眠との関係

先日の日本女性心身医学会学術集会で、慢性外陰部痛に関連する講演がありました。
今回は、慢性外陰部痛と不眠との関係についてお話します。

 

 

慢性外陰部痛とは

慢性外陰部痛とは、視診でわかる明らかな病変がなく、3ヶ月以上にわたって続く慢性的な外陰部の痛みや熱感をいいます。

外陰部痛を訴える方のほとんどは、性器ヘルペスやバルトリン腺膿瘍といった感染症、接触皮膚炎や毛のう炎などの皮膚疾患、女性ホルモンの低下や加齢に伴う外陰腟萎縮症など、視診で確認できる病変であり、ある程度治療法も確立されています。

しかし、慢性外陰部痛についてはその原因も不明な点が多く、心因性の疼痛であることも少なくないため、その治療に難渋することがあります。

 

 

慢性外陰部痛と不眠との関連

今回講演された漢方専門医の先生によると、慢性外陰部痛と不眠など他の症状との関連も少なくないとのことでした。
その施設では、外陰部痛を訴える方の4割近くが不眠を合併しており、「痛みが強くて眠れない、眠れないとますます外陰部痛が気になる」という悪循環に陥る方が少なくないようです。

 

 

日本人はいつも寝不足

ちなみに睡眠に関していえば、ある調査によると日本人の4人に1人は不眠症で、7時間以上睡眠を確保している方は20%、昼寝をしている方は12%であり、世界の中でも最も睡眠時間が短い国民とのことです。
特に、日本人の場合、男性よりも女性の方が睡眠時間が短く、これは他の国には見られない、日本人の特徴のようです。

 

 

外陰部痛に対する不眠の治療の効果

外陰部痛と不眠との悪循環を断ち切るため、不眠に効果のある漢方薬や睡眠導入剤などを用いたところ、不眠が改善され、その後外陰部痛も軽快した、との報告がありました。

演者の先生がよく使用する漢方薬は、半夏厚朴湯、苓桂朮甘湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡加竜骨牡蛎湯などで、必ずしも不眠適応のある漢方薬ばかりではありませんが、結果的に不眠、外陰部痛の双方に有効なケースも多いようです。

 

 

外陰部痛に限らず、不眠が何らかの影響を及ぼす疾患はかなり多いと思います。特に、心因性が強く疑われる疾患には良質な睡眠が必要不可欠でしょう。
今まで、外陰部痛と睡眠との関連をあまり考えたことはありませんでしたが、この講演をきっかけに、外陰部痛の背景に存在する不眠治療にも力を入れたいと考えています。