院長コラム

「夫源病」について考える

本日、大阪で日本女性心身医学会学術集会が行われ、「夫源病」の名付け親である大阪大学の先生をはじめ、心身医療の専門家による「夫婦の関係性から見た心身医学」についてのシンポジウムがありました。
「夫源病」とは「夫の何気ない言動や存在そのものが妻にとってストレスとなり、さまざまな体調不良を引き起こす現象」といわれています。
奇しくも大阪では、タレント上沼恵美子さんが「夫源病」で体調不良である、との噂が広まっています。
その真偽のほどはわかりませんが、今回のシンポジウムから得た学びを、私の意見も混じえながらお伝え致します。

 

 

女性の抑うつの要因の一つは“人間関係”ストレス

女性は、月経周期の関連や、妊娠・出産、更年期など、ホルモンの短期的および中長期的変動に伴い、抑うつ傾向になりやすいことが知られています。

それに加えて、学生時代の友達グループ、職場やママ友、PTAなどにおける人間関係のストレスが抑うつを増悪させる可能性があり、夫との関係も人間関係ストレスの一つといえます。

 

 

夫源病になりやすい夫とは?

・プライドが高く、妻への感謝や謝罪を言葉にして伝えることがなく、外ヅラだけはいい亭主関白

・ワークライフバランスを取り、仕事も子育てもしっかり頑張っていますよアピールが強いイクメン

・職場での部下育成やリーダーシップに自信があり、その経験や技術を妻や子供に強引に当てはめようとする意識高い系ヤンエグ

などは、要注意かもしれません。

ある先生の講演では、社会的に信頼されていると思われているが、ストレスも多い「先生業」や「僧侶」、家庭を顧みる余裕のない「警察官」や「出世コースに乗ったビジネスマン」などの職業が危険であるとお話されていました。もしかすると、従業員を雇っている中小零細企業・医療施設の経営者・社長・院長も危ないかもしれません。

 

 

解決方法は?

残念ながら、シンポジウムでは明快な解決法は示されませんでしたが、キーワードとして“言語化”と“距離感”が大切であると思われました。

つらい気持ちや要望を言葉にして、勇気をもって夫に伝える、もやもやした気持ちを言葉にして日記を書く、あるいは我々医療従事者を相手に話をするなど、苦悩や想いを言語化することで、ストレスが軽減することもあるようです。実際、夫婦同士がそれぞれ「自分の更年期症状」を言い合うことで、お互いの辛い症状が軽快した、という例が報告されていました。

また、夫婦はいつも一緒にいないで、それぞれが自分の趣味や時間を持つこと、つまり適切な距離感を持つことがストレス軽快に有用であるとのお話もありました。

しかしその一方で、夫婦で共通の趣味を持つのがいい、との見解もありますので、やはりケースバイケースといったところでしょうか。

 

 

今回のシンポジウムは、個人的に身につまされるテーマでしたが、自戒を込めてコラムに書かせて頂きました。
本日の学会では、その他にも大変興味深い講演がありましたので、後日紹介したいと思います。