院長コラム

当院における子宮内膜症の診断の流れ

子宮内膜症は子宮内膜(あるいは類似組織)が子宮の内腔以外の場所で発育・増殖する病気で、卵胞ホルモン(エストロゲン)が関与しています。生殖年齢女性の約10%に子宮内膜症がみられ、近年増加傾向にあるといわれています。
今回は子宮内膜症に診断について、「基礎からわかる女性内分泌」(診断と治療社)を参考に説明します。

 

 

子宮内膜症の自覚症状と頻度

子宮内膜症の症状は疼痛症状を中心に多岐にわたり、女性のQOLを著しく低下させます。
以下に「基礎からわかる女性内分泌」に記載されています、子宮内膜症患者さんの自覚症状とその頻度をお示しします。

月経痛 87.7%             下腹部痛 71.3%        腰痛     57.4%        性交痛 56.2%
不妊     50.9%             月経過多 48.1%       肛門痛 42.6%        排便痛 39.5%
嘔気・嘔吐 29.0%      不正出血 24.0%      下痢      23.1%         頭痛     20.6%
便秘    20.1%              頻尿          18.2%       微熱     17.6%         背部痛 17.0%

 

 

診察の流れ

○ 問診

子宮内膜症の主な症状は月経時の下腹部痛、腰痛、排便痛などで、月経時以外の腹痛や性交痛も少なくありません。したがって、月経痛を主訴にいらして頂いた20代から40代の方には、排便痛、性交時の下腹部痛、月経以外の下腹部痛など、子宮内膜症の主要な症状についてもお伺いします。

 

○ 内診・超音波検査

問診に引き続き、内診台で内診(必要に応じて直腸診)と経腟超音波検査を行ないます。
子宮内膜症が疑われる内診所見は、「子宮後屈」「子宮があまり動かない」「子宮や卵巣・卵管を動かすと痛みがある」「子宮の後面にしこりを触れる」「可動性が少ない卵巣腫瘍を触れる」などがあります。

経腟超音波検査では、子宮後屈の有無や子宮内膜症性卵巣嚢胞(卵巣チョコレート嚢胞)の有無・大きさ・悪性の可能性などを確認します。

 

○ 腫瘍マーカー(血液検査)

当院では、超音波検査で明らかな良性卵巣腫瘍と診断できない場合、腫瘍マーカー(CA125・CA19-9・CEAなど)を調べます。特にCA125は子宮内膜腫で高値を示すことが多いのですが、極端に高値の場合は悪性の可能性も視野に入れます。

 

○MRI検査

超音波検査のみでは卵巣腫瘍の種類や悪性所見の有無を診断することは困難であることが多く、MRI検査を行なうことも少なくありません。
当院では、超音波検査や腫瘍マーカー検査の段階で、手術の検討が望ましいと判断した場合は、国立東京医療センター、東邦大学医療センター大橋病院などの高次施設へ紹介します。
もし、緊急の治療が必要ない状況であれば、田園都市線用賀駅近くの検査専門施設「メディカルスキャニング」へ紹介しております。

 

○ 診断と方針

様々な診察・検査結果から、子宮内膜症や良性の卵巣チョコレート嚢胞と診断された場合、今後の方針についてご本人と相談します。最も重要なことは、すぐに妊娠をご希望されているかどうかです。
1年以上妊娠されない方は、不妊専門医の外来へ紹介しております。すぐには妊娠を考えていない方は、当院で薬物療法を開始し、経過観察して参ります。

 

 

子宮内膜症の確定診断は直視下に行なうことになっています。そのため、不妊期間が長い方、症状が強い方には、早い段階で腹腔鏡下手術が可能な施設をお勧めしています。
当院で行なっている薬物療法については、次回説明致します。