院長コラム

当院での分娩が可能な妊婦さん

当院は産婦人科医1人、ベッド数が8床の小規模施設です。そのため、リスクの少ない方を対象に分娩を取り扱っています。
今回は、2019年の時点で、当院での分娩が可能な条件を「妊娠リスクスコア」を参考にお伝え致します。

 

 

分娩時のご年齢と分娩歴

当院は日赤医療センターや国立成育医療研究センターの連携施設であるため、原則として「妊娠リスクスコア3点」までの妊婦さんを受け入れています。たとえば、40歳以上で初産の方は「妊娠リスクスコア6点」となるため、他院をお勧めしています。

ただし、経産婦さんで年齢以外のリスクがみられない場合は、「妊娠リスクスコア5点」ですが、40歳以上であっても受け入れることもあります。

 

 

身長と体重

一般に身長150cm未満の方は、骨盤が狭い傾向にあります。したがって150cm未満の初産婦の方は「妊娠リスクスコア2点」しかありませんが、難産となる可能性があることから他施設を紹介しています。

また、当院では妊娠前のBMI(体重kg÷身長m÷身長m)が25以上の初産婦さんは、原則として他施設を紹介していますが、経産婦さんで他にリスクがなければ、当院で分娩を受け入れることもあります。

 

 

既往症と合併症

高血圧と糖尿病に関しては、妊娠前から薬物療法でコントロールされている場合でも、妊娠という状況で突然悪化することが考えられるため、これらの合併症妊婦につきましては当院での分娩はできません

甲状腺疾患については、甲状腺機能亢進症合併の場合、薬物療法でコントロールされていたとしても、妊娠により甲状腺機能が増悪する可能性があります。また、母体の自己抗体や服用薬の成分が胎盤を通過し、胎児へ様々な影響を及ぼす可能性があるため、高次施設での周産期管理をお勧めしています。

甲状腺機能低下症の場合、妊娠初期から薬物療法で甲状腺機能をコントロールしていることが多く、妊娠・分娩に悪影響を及ぼすことは少ないため当院でも分娩を行なっています。

てんかんや精神神経疾患は、妊娠中、分娩時、産褥期各々に様々な影響を及ぼします。そのため、精神科がある総合病院を紹介しています。

婦人科疾患として、子宮筋腫や卵巣腫瘍が妊娠前から大きい場合は、分娩の妨げになることもあります。妊娠経過をみながら高次施設へ紹介を検討することがあります。また、前回の分娩が帝王切開であった場合や、子宮筋腫核出術のように子宮に傷を付けた場合は、今回の出産は帝王切開になる可能性が高いため、他施設へ紹介します。

これまでの妊娠で、常位胎盤早期剥離や妊娠高血圧症候群重症の既往がある方は、次の妊娠の際に再発する可能性あります。したがって、妊娠中から分娩までの管理は高次施設で行なうことが望ましいと思われます。

 

 

妊娠糖尿病について

妊娠中の糖尿病の検査で妊娠糖尿病と診断された場合、当院では東京医療センターなどへ紹介し、精査して頂きます。その結果、インスリン治療が必要な状態であれば高次施設で分娩をお願いし、食事指導のみで血糖のコントロールが可能であれば、当院で分娩管理することもあります。

 

 

当院は小さなクリニックであるため、母児の安全を最優先で考えた時、ご希望に添えず、分娩をお断りすることがありますが、何卒ご了承下さい。
また、妊婦健診や分娩の場所として当院を選んで下さった方々には、ご安心、ご納得頂けるよう、これからもスタッフ一同尽力して参りますので、宜しくお願い申し上げます。