院長コラム

当院における前置胎盤の対応

前置胎盤とは胎盤が内子宮口を覆っている状態で、妊娠中に大出血を起こすことがある非常に重大な産科合併症の一つです。
原則として、前置胎盤の妊娠中および分娩の管理は高次施設で行う必要があります。
小規模クリニックである当院の役割は、適切な時期に前置胎盤を診断し、高次施設へ繋げることであると考えています。
今回は、当院における前置胎盤の対応について、分娩予定施設別に説明します。

 

  • 当院での分娩を希望されている方

通常、前置胎盤の診断は妊娠20週以降に行いますが、確定診断が困難な場合も少なくありません。
しかし、妊娠28週以降になると性器出血をきたす可能性が高まるため、妊娠26週頃までには診断をつけて、高次施設へ紹介するようにしています。
また、妊娠中に出血する可能性が低い辺縁前置胎盤(胎盤の辺縁のみが内子宮口にかかってる)の場合でも、できるだけ妊娠30週頃までには紹介しています。

 

  • 東京医療センター、日赤医療センターなどの近隣の高次施設での分娩予定の方

高次施設で分娩予約を取られている妊婦さんが、妊娠32週頃までの妊婦健診を近医である当院で受けていらっしゃる方も少なくありません(セミオープンシステム)。
前置胎盤に限らず、当院での健診中、母児に異常が見られた場合は、早めの帰院をお願いしています。
前置胎盤の場合、しばしば緊急帝王切開になるため、平均分娩週数は34~35週といわれています。
そのため、高次施設での分娩が約束されているとはいえ、妊娠30~32週には分娩予定施設へお戻り頂く様にしています。

 

  • 比較的遠方へ帰省分娩をされる方

通常の帰省分娩の場合、妊娠32週頃まで当院で健診を受けて頂き、妊娠34週頃から帰省先にお戻り頂いています。
ただし、前置胎盤が疑われる場合は、帰省先への移動中に出血をきたす恐れがあります。そのため、帰省先が東京から比較的遠方の場合は、性器出血の頻度が高まる妊娠28週までに移動を完了することが望ましいと考えています。
さらに、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、帰省後はご実家で2週間の自宅待機を要請されているケースも多いでしょう。また、分娩予定施設が高次施設ではなく、小さなクリニックである方もいらっしゃいます。
以上から、自宅待機中の出血を避けるために、妊娠26週頃にはご実家にお戻り頂く必要があると思われます

 

前置胎盤の管理は、妊娠週数、分娩場所、分娩施設の規模、前置胎盤の程度、出血や子宮収縮などの症状、胎児の成長具合など、様々なことを考慮して判断しないといけません。
当院は母児の命と健康を守るために、これからも尽力して参ります。