院長コラム

女性アスリートは鉄欠乏性貧血にご注意

女性は男性に比べて鉄欠乏性貧血になりやすいことは知られています。
さらにアスリートは、運動による鉄排出の増加(汗など)、鉄需要の増加(血液や筋肉の増加など)のため、鉄の必要量が多く、鉄の摂取量が少ないと容易に鉄欠乏性貧血になりやすいそうです。
今回、先日配信された「女性アスリートのためのオンラインセミナー」から、女性アスリートと貧血についての情報を共有したいと思います。

 

  • 鉄欠乏性貧血の症状

軽い貧血では自覚症状は乏しく、自分が貧血であることを気付かないことも少なくありません。
貧血が進行すると、めまい、立ちくらみ、頭痛、倦怠感、易疲労感、動機・息切れを自覚し、顔面や眼瞼結膜が白くなります。
アスリートの場合、「記録が低下した」「練習がきつくなった」などの訴えが多く、記録競技では軽い貧血でも記録が低下する場合もあるそうです。

 

  • 女性の「鉄の食事摂取基準」

月経がある女性の場合、1日の鉄摂取の推奨量は10~14歳で12.0mg、15~49歳で10.5mgとなっており、7.5~10mgの男性よりも多くなっております。
さらに、アスリートは一般人の1.3~1.7倍必要といわれているため、努めて鉄分を多く含む食品を摂取する必要があります。
ちなみに、吸収率が10~20%のヘム鉄を多く含む食品には、レバー、牛もも赤肉、カツオ、いわし、キハダマグロ、赤貝など、吸収率が4~6%の非ヘム鉄を多く含む食品には、ひじき、ほうれん草、小松菜、大豆、卵黄などがあります。
これらの食品をバランスよく摂取することが非常に大切です。

 

  • 鉄剤への反応が悪い方は、月経過多やピロリ菌感染に注意

鉄剤を服用しても貧血を繰り返したり、改善しない場合は、出血が多いケースや鉄の吸収不良のケースが考えられます。
出血が多い例としては、経血量が多い過多月経が挙げられます。経血量を他人と比べることはあまりないと思いますので、ご自身が過多月経であるかどうか判断することは難しいかもしれませんが、血液の塊が見られる場合や8日間以上月経が持続する場合は、婦人科を受診されることをお勧めします。
一方、鉄の吸収不足の原因としては、ピロリ菌感染が注目されています。ピロリ菌感により胃酸の分泌が低下すると、鉄の吸収が悪くなるとのことです。除菌をすると貧血が改善されるため、鉄剤の服薬で貧血が改善されず、過多・過長月経も見られない場合は、内科を受診されることをお勧めします。

 

鉄欠乏性貧血はパフォーマンスの低下に直結します。
食生活では鉄、タンパク質、ビタミンなど栄養バランスを心掛ける事が大切です。
もし、易疲労感や記録の低下などが見られたら早めに医療機関を受診し、鉄欠乏性貧血と診断されたら適切な治療を受けましょう。