院長コラム

妊娠中の子宮頚部細胞診で、異常が見られた妊婦さんへの対応

一定期間子宮頚がん検査を受けていない妊婦さんに対して、妊娠初期に子宮頚部細胞診を行うことが推奨されています。
当院では、ほとんどの妊婦さんに対して、妊娠9週前後に子宮頚部細胞診を行っています。
検査で異常が見られた場合、原則として非妊娠時と同様に扱いますが、妊婦さんならではの対応もあります。
今回、「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」を参考に、妊娠中の子宮頚部細胞診で異常が見られた場合の、当院における対応について説明します。

 

  • ASC-US(軽度な異常扁平上皮細胞)・LSIL(軽度異形成)の場合

子宮頚がんや異形成は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の子宮頚部持続感染が原因ですが、注意が必要なのは発がん性の高いハイリスクHPVです。
そこで、細胞診でASC-US と判定された場合、全例にハイリスクHPV検査を行い、陰性であれば検査終了とし、陽性であればコルポスコピー(拡大鏡検査)、生検組織診を行います。
LSILの場合は、ハイリスクHPV検査は省略してコルポスコピー、生検組織診を行います。
ただし、ASC-USやLSILの場合、組織診で浸潤がんと判明する可能性は極めて低いことが知られています。また、妊娠中は生検による出血が多くなる可能性もあります。
そこで、当院ではコルポスコピーで所見が強い場合に限り生検を行い、所見があまり強くない場合は生検をせず、定期的に細胞診を行うようにしています。

 

  • 中等度異形成が疑われる場合

細胞診で中等度異形成が疑われる場合は、それ以上の病変の可能性も否定できないため、原則としてコルポスコピー、生検組織診を行います。
その結果、軽度~中等度異形成であれば当院で定期的に細胞診を行いますが、高度異形成異常の病変と診断された場合は、精査目的で高次施設へ紹介します。
尚、当院では、軽度~中等度異形成までの妊婦さんの分娩を取り扱っています。

 

  • 高度異形成、上皮内がん、微小浸潤がん以上の病変が疑われる場合

細胞診で高度異形成、上皮内がん、微小浸潤がん以上の病変が疑われる場合は、速やかに高次施設へ紹介します。
ちなみに、妊娠中の円錐切除などの外科的治療は、微小浸潤がん以上の病変が対象です。組織診で高度異形成、上皮内がんの場合は、妊娠中に浸潤がんに進展する頻度は0.3%と低いため、細胞診やコルポスコピーによる経過観察となることが多いようです。

 

子宮頚部の細胞異常があっても、産科的適応がなければ分娩様式は経腟分娩となります。
また、ハイリスクHPV陰性のASC-US以外の方は、分娩後2~3か月後に細胞診あるいはコルポスコピー、生検組織診で再評価を行います。
他施設で分娩された方も、検査ご希望の方は是非ご連絡下さい。