院長コラム

当院でホルモン療法に用いる主な薬剤(1)~卵胞ホルモン製剤~

思春期から性成熟期の無月経に対するカウフマン療法・ホルムストローム療法や、更年期障害・閉経後骨粗鬆症に対するホルモン補充療法(HRT)など、女性ホルモンの用いた治療は婦人科診療の大きな柱です。
女性ホルモン剤である卵胞ホルモン(エストロゲン)製剤、黄体ホルモン(プロゲスチン)製剤、エストロゲン・プロゲスチン配合剤にはいくつかの種類があります。
今回は、当院で用いるエストロゲン製剤について説明致します。

 

 

○ プレマリン錠 0.625(経口)

以前はHRTとしても用いていましたが、当院では黄体ホルモン製剤「デュファストン」と組み合わせて、主にカウフマン療法として用いています。

続発性無月経のうち、卵巣から自前のエストロゲンが十分に分泌しており、プロゲスチンの内服薬や注射の投与で消退出血がみられるものを第1度無月経といいます。一方、自前のエストロゲンの分泌がみられず、プロゲスチンの内服や注射では出血がありませんが、エストロゲン・プロゲスチン配合剤の内服や注射で消退出血がみられるものを第2度無月経といいます。

カウフマン療法は主に第2度無月経の治療として行ないます。当院では、消退出血7日目頃から「プレマリン1錠/日」を7日間服用し、続けてエストロゲン・プロゲスチン配合剤「プラノバール錠1錠/日」を10日間する方法、または「プレマリン1錠/日」を21日間服用し、後半の10日間はプロゲスチン製剤「ディナゲスト5mg 3錠/日」を併用する方法を主に行なっています。

 

○ ジュリナ錠 0.5mg(経口)

純粋なエストラジオール製剤であるジュリナは、主にHRTとして用いています。子宮を有していない方に対しては、ジュリナ1錠/日(低用量)を連日内服して頂きますが、ほてり・発汗などの症状があまり改善しない場合は、ジュリナ2錠/日(通常量)へ増量します。

また、子宮を有している方の場合、エストロゲン製剤を単独で長期に使用すると、子宮内膜増殖症や子宮内膜癌のリスクが増加します。そのため、子宮内膜組織の増殖を抑制する働きがあるプロゲスチン製剤(「プロベラ錠2.5mg」、「デュファストン錠5mg」)を併用します。

 

○ エストラーナテープ 0.72mg(経皮)

内服薬による胃痛・嘔気などの副作用がある方には経皮剤を使用します。「エストラーナテープ 0.72mg」は貼付剤であり、2日に1回(通常量)貼り替えます。

尚、経皮のエストロゲン製剤を長期間使用する場合も、子宮を有している方はプロゲスチン製剤の内服を併用する必要があります。

 

○ ル・エストロジェル 0.54mg/1プッシュ(経皮)

「ル・エストロジェル」はゲル剤であり、その容器はプッシュ式になっています。1プッシュが低用量、2プッシュが通常量で、1日1回皮膚に擦り込みます。

 

○ ディビゲル 1mg/包(経皮)

「ディビゲル」もゲル剤ですが個包装になっており、1日1包(通常量)連日皮膚に擦り込みます。

 

○ エストリール錠1mg(経口)・「エストリール腟錠0.5mg」(腟内挿入)

全身的な更年期症状はあまりみられないものの、外陰・腟の萎縮症状が強い方やご高齢の方に対しては、比較的弱い「エストリール錠1mg」の内服、または「エストリール腟錠0.5mg」の腟内挿入で対応することがあります。

 

 

卵巣からのエストロゲンの分泌が低下し、更年期障害など様々な症状がみられる場合、禁忌でなければエストロゲン製剤が第I選択となります。
症状や体質に応じて、エストロゲンの種類はどれがいいか、経口剤か経皮剤か、プロゲスチン製剤を併用すべきかどうかなど、個別に治療法を検討しています。
次回はプロゲスチン製剤、エストロゲン・プロゲスチン配合剤について説明します。