院長コラム

当院では喫煙者へのOC・LEP処方は原則中止とします

今年の4月、「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(OC・LEP)ガイドライン2020年度版」(日本産科婦人科学会/日本女性医学会発行)が発刊されました。
今回は、新しいガイドラインを参考に、喫煙者のOC・LEPの使用について、当院の対応を交えながら説明します。

 

新しいガイドラインにおける説明

OC・LEP服用者は服用していない方と比べて、血栓症のリスクがやや高まることが報告されています。一方、喫煙も血栓症のリスク因子であることが知られています。
これらOC・LEP服用と喫煙が合わさることで、心筋梗塞や静脈血栓塞栓症などの重篤な血栓症のリスクは、さらに上昇します。
特に、35歳を超えると喫煙に関連した死亡率が高くなるため、新しいガイドラインでは以下を推奨しています。

①35歳以上で1日15本以上の喫煙者への投与は禁忌である。

②35歳以上の習慣的喫煙者への投与は原則不可である。

③35歳未満の習慣的喫煙者に対しては投与を慎重に検討する。

 

電子タバコとOC・LEP

電子タバコについては、それ自体の安全性について結論が出ておらず、むしろ、脳卒中や心筋梗塞が増加したとの報告や、血小板の活性化・活性酸素の産生・血管内皮機能障害などの心血管疾患のリスクに関連しているとの報告があるそうです。
つまり、電子タバコとOC・LEPの併用により心血管疾患のリスクがさらに上昇する可能性があるため、必ずしも安全とは言えません。

 

当院では紙タバコ・電子タバコ習慣的喫煙者へのOC・LEP処方は原則中止

当院では新しいガイドラインを踏まえて、「年齢を問わず、紙タバコも電子タバコ(含加熱式タバコ)も習慣的に喫煙している方へは、OC・LEPは原則処方しない」ことに致しました。
これまでは当院でも、ガイドライン②③の方は慎重投与としていましたが、これからは随時禁煙を徹底し、必要に応じて血栓症のリスクがない黄体ホルモン製剤などへの切り替えを進めていく予定です。

 

喫煙は血栓症以外にも多くの健康被害のリスクを上昇させます。
女性は男性よりも喫煙のリスクを受けやすいともいわれており、月経困難症治療目的でOC・LEPを服用されている喫煙者は、禁煙するだけでも月経痛が軽快する可能性があります。
OC・LEPをご希望される喫煙者は、まずは禁煙にトライしましょう。