院長コラム

当院での「クロミッド錠」を用いた排卵対策

当院では専門的な不妊検査および治療は行っていません。ただし、不妊専門施設での診察はご希望されず、排卵時期の確認を望まれる方に対しては、タイミング指導を行っております。その際、無排卵周期症や排卵遅延の方に対して、クロミフェンクエン酸塩(CC:クロミッド錠)を使用することがあります。
今回は、「女性内分泌クリニカルクエスチョン100」(診断と治療社)などを基に、当院での「クロミッド錠」を用いた排卵対策について説明します。

 

 

卵胞を発育させるクロミッド錠(CC)の働き

CCはエストロゲンと似た構造を持っており、エストロゲンの受け皿(受容体)と結合します。脳の視床下部にあるエストロゲン受容体にCCが結合すると、本当のエストロゲンが受容体に結合できなくなります。
すると、視床下部は「血中エストロゲン濃度が低下した」と判断します。そして、視床下部は下垂体に対し、「卵巣からのエストロゲン分泌量を増やすために、卵胞を発育させるよう」命令を下します。
その結果、下垂体から卵胞刺激ホルモンが分泌され、その作用によって卵胞の発育が促進されることになります。

 

CCの投与方法

  • 通常の場合

月経開始日、またはホルモン剤による出血(消退出血)開始日を月経周期1日目として、月経周期5日目から5日間、1日1錠(50mg)ずつ服用します。
月経周期14~15日目に超音波で卵胞の大きさを確認し、18~20mm以上であればタイミング指導を検討します。

  • 反応が弱い場合

1日1錠(50mg)5日間の内服では卵胞の発育が見られない場合は、さらに5日間1日1錠の服用を追加し(二段階投与)、卵胞の発育を評価します。
それでも卵胞発育が見られない場合は、ホルモン剤を用いて消退出血を起こしリセットします。そして、今度は月経周期5日目から1日2錠(100mg)に増量して5日間内服します。あるいは、CCを増量せずに投与期間を7~10間に延長することもあります。
施設によってはCCを1日3錠(150mg)まで増量されていますが、当院では1日2錠(100mg)までとし、それで卵胞発育が見られなければ不妊専門施設へ紹介しています。

  • 反応が強過ぎる場合

1日1錠(50mg)5日間の内服で2個以上の卵胞が18mm以上に成熟してしまった場合、もし排卵に合わせて性交すると、双子など多胎妊娠となる可能性があります。
多胎妊娠は母児ともにリスクが高いため、その周期は妊娠しないようにタイミング指導を見送ります。
次周期は、1日1錠(50mg)の服用期間を3~4日間に短縮し、1個の卵胞のみが18mm以上に成熟した段階で、排卵を促す注射を考慮します。

 

 

クロミッドを用いた排卵誘発およびタイミング指導を4回行っても妊娠に至らなければ、原則として近隣の不妊症専門施設へ紹介しています。
ただし、ご希望によっては、1-2回のタイミング指導後早めに紹介することもあります。
反対に、5回以上当院でタイミング指導を行うことも可能です。
是非、方針についてご相談下さい。