院長コラム

当院が取り組むSDGs(3) 「性に関する正しい情報の啓発に努め、女性のQOL(生活の質)向上に尽力する」

今回は、当院が取り組むべき持続可能な開発目標( SDGs)のうち、「目標3:ターゲット3.7および目標5:ターゲット5.2」に対する具体的な方針ついて説明します。
ちなみにターゲット3.7は「性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする(抜粋)」、ターゲット5.2は「人身売買や性的搾取など、すべての女性および女児に対する、あらゆる形態の暴力を排除する(抜粋)」とあり、産婦人科医療にも直接関係しています。

 

 

月経関連情報の発信

月経困難症や月経前症候群のため、学業や仕事、趣味など様々な活動に悪影響が出てしまっている方は少なくありません。しかし、その辛さは回りの男性にはなかなか理解してもらえず、女性であっても月経トラブルが軽い方には共感されにくいかもしれません。
これからは、月経関連のトラブルに関して、職場や家庭の皆がある程度認識し、情報を共有することも必要になってくるかも知れません。

そのためには、月経困難症や月経前症候群の症状、原因、治療法などの情報を実際に苦しまれている方だけでなく、男女問わず幅広く発信していくことが重要であると考えています。

 

 

避妊法・性感染症予防・子宮頚がん予防の啓発

避妊法を理解し実践することは、女性が自ら身を守るためには必要です。最も効果的な避妊法は経口避妊薬(OC)または低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP:月経困難症治療薬)、あるいは黄体ホルモン放出の子宮内システム(IUS:月経困難症・過多月経治療薬)であり、これらに比べてコンドームの避妊効果は高くありません。尚、避妊しない性交、あるいはコンドームが破損・滑脱してしまった場合は、72時間以内に緊急避妊薬(レボノルゲストレル錠1.5mg)を服用することで、妊娠の可能性を下げることができます。

一方、性感染症予防としてはOC・LEP・IUSは無力であり、コンドームが大変大きな役割を担っています。そのため、オーラルセックスを含むあらゆる性交の際には、適切にコンドームを装着することが男性側に求められます。

また、子宮頚がんの原因であるハイリスクタイプHPV(ヒトパピローマウイルス)は性行為で感染しますが、13種類あるハイリスクタイプのうち、特に発がん性が高い2種類については、性体験前のHPVワクチンで予防することが可能です。
ただし、子宮頚がんを100%ワクチンだけで予防することは困難ですので、20歳以上で性体験のある女性には、2年に1回子宮頚がん検診を受けることが勧められています。

思春期の若い人達はもちろん、20代、30代の方々に対しても、このような情報を発信していきたいと考えています。

 

 

性暴力被害者への対応

卑劣な性犯罪の被害にあわれてしまった方の診察も、婦人科医が担う役割の一つです。産婦人科医としての診察や検査を行ない、警察の捜査に協力し、状況によっては緊急避妊薬を処方します。また、精神的なサポートのため、メンタルクリニックをご案内させて頂く事もあります。
性暴力を0にする事が社会的な大きな目標ですが、今後も産婦人科の一開業医として、何ができるかを模索して参ります。

 

 

以上のような活動は、個人で対応することには限度があり、学校、事業所、行政機関、警察署など、様々な機関や職種の方々との連携が必要不可欠であると考えております。
これからも、当院の理念、方針に沿った活動がSDGsへの取り組みに繋がると信じて、目の前の患者さんのため、地域社会のため、できることを一つずつ積み重ねて参ります。