院長コラム

将来の妊娠を見据えた思春期女性の健康課題対策 ~子宮頸がん予防のHPVワクチン接種~

子宮頚がんは子宮頚部(入口)に発生するがんで、発がん性の高いヒトパピローマウイルス(ハイリスクHPV)の持続感染が原因であることが知られています。
性交によりHPVは感染しますが、コンドームの使用では完全に防ぐことができないため、子宮頸がん予防には性交経験前のHPVワクチン接種が勧められています。
子宮頚がんは妊娠・出産・子育て世代である30代~40代を直撃し、幼子を残して母親の命を奪うことから“マザーキラー”との異名があります。また、妊娠する前に進行した子宮頚がんになってしまうと、子宮を摘出する必要があるため、術後は妊娠することができなくなってしまいます。
今回は、将来の妊娠を見据えた思春期女性の健康課題として、HPVワクチン接種について説明します。

 

HPVワクチン接種の定期接種年齢

原則として、公費で受けられる定期接種対象者は小学校6年生から高校一年生相当の女子です。
しかし、平成25年から令和3年まで行政からの積極的勧奨が差し控えられていたため、定期接種の対象者であったにも関わらず、HPVワクチン接種をされていない方は大勢いらっしゃると思います。
そのため、誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日で、過去にHPVワクチンを合計3回接種していない女性に対して、“キャッチアップ世代”として定期接種と同様に無料で接種することができます。是非お住いの行政へご確認下さい。

 

HPVワクチンの種類

定期接種として接種できるHPVワクチンは2種類あります。
一つは子宮頚がんの予防のみ可能な2価ワクチン(ハイリスクHPV2つの型に有効)“サーバリックス”です。
もう一つは、子宮頚がんに加えて尖圭コンジローマの予防が可能な4価ワクチン(ハイリスクHPV2つの型+尖圭コンジローマの原因となるHPV2つの型=合計4つの型に有効)“ガーダシル”です。
当院では、性感染症である尖圭コンジローマも予防できる“ガーダシル”を推奨しています。

 

4価ワクチン“ガーダシル”の接種スケジュール

しっかりと子宮頚がんを予防するためには、全てのHPVワクチンは3回の接種が必要です。
ガーダシルの標準的な接種スケジュールでは、1回目の接種から2か月目に2回目、1回目の接種から6か月目に3回目を接種することになっています。
また、より短期間に接種を希望される場合は、1回目と2回目は1か月以上、2回目と3回目は3か月以上あければ接種可能なため、最短4か月で3回の接種を終えることができます。
反対に、各接種間隔を延ばすことはできますが、1年以内に3回の接種を終えるようにしましょう。

 

16歳頃までに、かつ性交経験前に3回のHPVワクチン接種を終えることが、最も子宮頚がん予防効果が高いといわれています。
ただし、17歳以上でも、あるいは性交経験後であっても、ワクチン接種の予防効果は十分期待できます。
まだ接種をされていない思春期の方は、“将来の自分”に辛い思いをさせないため、HPVワクチン接種をご検討下さい。