院長コラム

子宮内膜症治療薬の使い分け

子宮内膜症は、激しい月経困難症をきたし、不妊の原因となる重大な疾患です。
そのため、子宮内膜症が認められた場合は、初期の段階で治療し、それ以上の悪化を防ぐことが大切です。現在、主に使用されている子宮内膜首治療薬は3種類あります。
今回は、それぞれの特徴と、当院での使い分けについて説明します。

 

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は治療薬の柱

LEPは月経困難症治療薬として有用な薬剤で、避妊効果や月経前症候群(PMS)の治療効果も期待できます。
ただし、卵巣チョコレート嚢胞が大きい場合や、腹膜の病変が強くて月経時以外に下腹部痛・腰痛・性交痛などを認める場合は、LEPはあまり有効ではありません。
また、エストロゲンには血栓症のリスクがあるため、40歳以上の方に対しては慎重に投与する必要があります。
当院では、月経痛は強いものの、卵巣チョコレート嚢胞があまり大きくない方、避妊を希望する方、PMSで悩まれている方に対して、LEPを第一選択としています。

 

黄体ホルモン製剤は長期間の服用が可能

黄体ホルモン製剤(ディナゲスト錠)には、子宮内膜組織の増殖を直接抑え込む作用があります。
そのため、卵巣チョコレート嚢胞が比較的大きい場合や、子宮内膜症による腹腔内癒着が強い方に効果を発揮します。
また、LEPと異なり血栓症のリスクがないため、40歳以上の方に対しても安心して使用できます。
ただし、一日2回服用しなければならず、副作用として不正出血を認めることも少なくありません。
当院では、LEPの効果が不良であった方、血栓症リスクなどのためにLEPが使用できない方、偽閉経療法終了後の方などを対象に、黄体ホルモン製剤を使用しています。

 

偽閉経療法は原則6か月間まで

内服薬や月1回の皮下注射によりエストロゲンを低下させ、人工的に閉経にさせる偽閉経療法は、大変有用です。
ただし、長期にわたる治療により、骨密度が低下することが知られています。そのため、原則として6か月までしか使用することができません。
当院では、40代以上で卵巣チョコレート嚢胞が大きい方、LEPや黄体ホルモン製剤の効果が不良な場合に、偽閉経療法を行なっています。

 

これら3つの治療薬には、一長一短があります。
場合により、それぞれを組み合わせるなどして、患者さんにとって最良の治療法を見つけていきます。
月経痛に悩まれている方は、是非婦人科を受診して下さい。