院長コラム

子宮内膜症の診察の流れ

子宮内膜症とは、子宮内膜に類似した組織が子宮内腔以外で発育・増殖する病気であり、女性ホルモンのエストロゲンによって悪化します。
子宮内膜症は生殖可能年齢女性の約10%にみられ、月経痛、性交痛や不妊症の原因となり、生活の質を著しく低下させるため、その診断と治療は非常に重要です。
今回は、「産婦人科navi vol.1(2020年5月発行)」(富士製薬工業株式会社発行)の記事を参考に、子宮内膜症の診療の流れを説明します。

 

 

子宮内膜症の主な症状

子宮内膜症の代表的な症状は月経痛であり、進行すると慢性骨盤痛、性交痛、排便痛をきたすことがあります。また、不妊の原因が子宮内膜症であることも少なくありません。

月経痛の程度を数値化し、評価し易くするため、スコアにすることがあります。以下に月経痛スコアの一例をお示しします。

○ 月経困難症の程度
なし :0点
軽度 :仕事・学業・家事に若干支障あり:1点
中等度:横になって休憩したくなる程、仕事・学業・家事に支障きたす:2点 
重度 :1日中寝込み仕事・学業・家事ができない:3点
 
○ 鎮痛剤の使用
なし :0点
軽度 :直前(あるいは現在)の月経期間中に鎮痛剤を1日使用した:1点
中等度:直前(あるいは現在)の月経期間中に鎮痛剤を2日使用した:2点
重度 :直前(あるいは現在)の月経期間中に鎮痛剤を3日以上使用した:3点

 

機能性月経困難症と器質性月経困難症との鑑別

月経困難症には、器質的な疾患がない「機能性月経困難症」と子宮内膜腫などが原因の「器質性月経困難症」に分類されます。

「機能性月経困難症」の特徴は、初経後3年以内のことが多く、好発年齢は15~22歳といわれています。月経期間のみの痛みであることが多く、持続時間は数時間から2日間と比較的短いです。また、通常は加齢により次第に軽快していきます。

一方、「器質性月経困難症」の特徴は、初経後5年以上経過した方に多く、好発年齢は30歳以降といわれています。子宮内膜症が悪化すると、月経時以外にも痛みをきたすことがあり、比較的長期間持続します。また、加齢とともに症状が悪化することがあり、「機能性月経困難症」から「器質性月経困難症」へ移行するケースも少なくありません。

 

 

子宮内膜症の診断

まず、問診から器質性月経困難症、月経時以外の下腹部痛・腰背部痛、性交痛・排便痛の有無を確認します。

次に内診または直腸診で子宮と卵管・卵巣周辺の圧痛、可動性、腫瘤などの有無を確認後、経腟(または経腹)超音波検査で子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣腫瘍などの病変がないかを調べます。

もし、卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)と思われる卵巣腫瘍が見られた場合は、子宮内膜症や卵巣がんなどで高値を示す腫瘍マーカーを血液検査で調べます。

さらに、悪性腫瘍などとの鑑別や超音波検査では検出できない病変の確認のため、MRI検査を行います。ちなみに、当院ではMRI検査ができないため、近隣の検査施設(メディカルスキャニング)などへ紹介しております。

 

 

以上のように、数回の診察および検査で子宮内膜症を診断し、その重症度も把握するようにしています。
その後は、患者さん個々の状況やご希望に応じて、治療法を決定することになります。
子宮内膜症の治療法については次回説明します。