院長コラム

妊娠中・授乳中でも抗うつ剤は服用可能です

 

女性のうつ病の発生頻度は男性の2倍で、月経前後、周産期、更年期の時期に増えることが知られています。特に周産期は、ホルモンの変動、心理的・社会的環境因子などが絡み合って、妊婦さんの7~13%、産後6か月以内の女性の10~15%に周産期うつ病がみられるといわれています。
今回は、先日開催されました日本女性心身医学会研修会での講演内容、「周産期医学 2018年1月号 産科の薬物療法」(東京医学社)などを参考に、妊婦さん、授乳婦さんが服用可能な抗うつ剤について説明します。

 

 

周産期に使用可能な代表的な抗うつ薬

○ 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

脳内の神経伝達物質であるセロトニン(幸せホルモン)の減少を抑えることにより、うつ症状を改善させます。効果発現までに2~4週間以上要することがあり、その効果もマイルドであるため、重症例には適さないと言われています。また、意欲低下への効果はないとされています。副作用として嘔気、めまい、下痢などがありますが、継続によって軽快します。

薬剤名:パキシル錠・ルボックス錠・ジェイゾロフト錠・レクサプリ錠

 

○ セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの両方に作用します。ノルアドレナリン(やる気ホルモン)には、意欲・気力の低下を改善する効果があります。効果はマイルドですが、SSRIよりも意欲向上が期待できます。副作用として、血圧上昇、頻脈、頭痛、尿閉などがあるため、特に循環器疾患の方には慎重に投与する必要があります。

薬剤名:イフェクササーSRカプセル・トレドミン錠・サインバルタ錠

 

○ ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

セロトニンの作用増強やノルアドレナリンの放出を促進するため、抗うつ効果は強力で、SSRIやSNRIよりも効果発現が早いといわれています。胃腸障害が少なく、睡眠障害にも効果があるとの事です。

薬剤名:リフレックス錠

 

 

妊娠中も授乳中も、抗うつ剤が赤ちゃんに悪影響を及ぼすことはほとんどないと考えていいでしょう。
むしろ、過剰に不安になって、自己判断で抗うつ薬を中止・減量すると、精神状態が悪化することも考えられます。
もし、服薬が心配になるのでしたら、無断で休薬する前に、必ずかかりつけの精神科の先生にご相談下さい。