院長コラム
婦人科疾患で用いる主な漢方薬
前回に引き続き、日赤医療センター内科・漢方外来の先生のご講演内容を元に、婦人科疾患で用いる主な漢方薬の特徴について説明します。
○ 当帰芍薬散
やや虚弱の方の月経困難症、月経不順、更年期症候群、貧血、浮腫、めまい、立ちくらみ、耳鳴、頭痛、手足末梢の冷えなどに用います。
具体的には、夏の冷房が苦手な方、舌に歯型(歯痕)が残っている方、腹壁の筋肉が少ないため腹部大動脈拍動を触知できる方、顔色が悪く体温が低い方などは、体質的に当帰芍薬散が有効であると思われます。
○ 加味逍遥散
やや虚弱の方の更年期障害(ホットフラッシュ、動悸、発汗)、月経前症候群(主に抑うつ症状)、月経困難症、月経不順、不眠などに用います。
更年期障害・月経前症候群の中でも、特に抑うつ傾向などの精神症状がある方に有用です。具体的には、うじうじ考える性分で、そのために熟睡ができず、不安感や焦燥感が強く、症状が多岐にわたり、しかも変動しやすい方には、加味逍遥散の適応になります。
○ 温経湯
やや虚弱な方の月経不順、月経困難症、不妊症、多嚢胞卵巣、無排卵月経に用いられることが多く、特に排卵障害に対して効果的であるといわれています。
体質でいえば、手のひらや口唇が乾燥している方、冷えのぼせが認められる方、やや胃腸虚弱の方などが温経湯の適応と思われます。
○ 桂枝茯苓丸
中等以上の体格の方の月経困難症、月経不順、更年期障害、不眠などに用います。
体質的に、皮膚がどす黒く、口唇・舌辺縁が暗紫色の方、下腹部筋緊張と圧痛を認める方、筋肉が発達している方などが桂枝茯苓丸のいい適応だと思います。
○ 抑肝散
やや虚弱な方の月経前症候群、不眠などに用います。精神症状の中でも、いらいら感が強く、せっかちな方、興奮しやすく怒りっぽい方には抑肝散が有効でしょう。
尚、胃腸虚弱、動悸、めまいが見られる方には、抑肝散加陳皮半夏を処方することもあります。
○ 桃核承気湯
中等度以上の体格の方の月経困難症、月経前症候群、月経時・産後の精神不安、月経不順などに持いられます。
体質としては、頑強で筋肉質の方、左下腹部の腹壁に強い圧痛を認める方は桃核承気湯の適応と思われます。
○ 女神散
体質は中等度、ある程度体格が充実している方の更年期障害、神経症、不眠症などに用います。
特に産褥期の神経症、例えばめまい、動悸、発汗、逆上感、悪寒、冷え、不眠、夜間の“金縛り”、不安感などに有効です。
○ 柴胡加竜骨牡蛎湯
体格が頑強~肥満の方の軽度抑うつ、動悸。のぼせ、不安感、不眠などに用います。
○ 補中益気湯
体格的に虚弱の方の疲労感、倦怠感などに用います。体が重い方、元気がない方、昼食後眠くなる方、風邪を引きやすい方などには、是非、補中益気湯服用をご検討下さい。
○ 半夏厚朴湯
体質は中等度~やや虚弱の方の不安神経症、神経性胃炎、不眠症、抑うつ気分、咽喉頭異常感(のどに異物がある感じ)に有効です。
虚弱者の不安障害には、補中益気湯と半夏厚朴湯との併用で軽快した報告があります。
産婦人科の実臨床では、その他にも多くの漢方薬を使用しています。
当院では患者さま訴えを傾聴し、体質・症状にあった漢方療法を提案させて頂きます。