院長コラム

妊婦さんの白衣性高血圧について

妊婦健診では毎回血圧を測定しており、収縮期血圧は140mmHg以上あるいは拡張期血圧が90mmHg以上の場合、妊娠高血圧症候群である可能性があり、より注意して妊娠管理する必要があります。
ただし、中には「白衣高血圧」が隠れている場合があり、その鑑別が大変重要になります。
今回は、妊婦さんの白衣高血圧について、「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」、「妊娠高血圧症候群新定義・分類運用上のポイント」(日本妊娠高血圧学会)を参考にお伝えします。

 

白衣高血圧とは

白衣高血圧とは、「診察室血圧が140/90mmHg 以上を認めるが、自宅では135/85mmHg未満」であるものをいいます。つまり、外来では高血圧ですが、外来以外では正常血圧である状態です。
ある調査によると、初産婦さんは経産婦さんよりも外来での血圧は高値でしたが、家庭での血圧には有意な差がなかったそうで、初産婦さんの方が白衣高血圧になりやすいと考えられています。

 

白衣高血圧の方への注意

診察室血圧は高血圧であった妊婦さんの内、76%が白衣高血圧であったとの報告がある一方、白衣高血圧の50%が妊娠高血圧症候群に移行したとの報告があります。
白衣高血圧だからといって安心はできず、血圧が正常の方よりも注意して経過観察する必要があります。

 

一家に一台“電動血圧計”を

ガイドラインによると、家庭血圧測定は起床時と就寝前に各2回測定して頂き、その平均値を取ります。その結果、収縮期血圧が139mmHg以下、かつ拡張期血圧が89mmHg以下の場合は白衣性高血圧、それ以外は妊娠高血圧症候群と診断されます。
このように自宅での血圧測定は非常に有用であるため、診察室での血圧が高かった方はもちろん、高血圧の家族歴のある方、蛋白尿が認められた方、妊娠中の体重増加やむくみが著明な方などは、電動血圧計(できれば上腕で計測するタイプ)をご家庭にご準備頂くことをお勧めします。

 

当院ではリスクの少ない方の分娩を取り扱っております。
白衣性高血圧の方でも、診察室血圧が著明に高い方、自宅血圧が上限に近い方、蛋白尿が認められる方など、リスクが高まる可能性があります。
その際は、高次施設へ紹介させて頂くことがある旨、ご了承下さい。