院長コラム

妊娠中のマイナートラブルと食事

妊娠中は、お腹の赤ちゃんを元気に育てるため、また分娩時の体力消耗に備えるため、摂取カロリーや栄養素など、食事に関して十分に注意する必要があります。
今回は「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編)などを参考に、妊娠中のマイナートラブルと食事について、気をつけるべきポイントをいくつか説明します。

 

 

○ バランスのとれた栄養素を摂取しましょう

バランスのとれた栄養素を摂取するため、主菜・副菜・主食を中心に、汁物・牛乳、乳製品・果物を合わせることをお勧めします。
主菜は肉・魚・卵・大豆製品などのメインのおかずです。蛋白質をしっかり摂取しましょう。
副菜は野菜・きのこ・海藻などのおかずです。ビタミンやミネラルを十分に摂取しましょう。
主食は、ごはん・パン・麺類などの炭水化物です。体を動かすエネルギーとなりますので、抜かさないようにしましょう。
汁物は、野菜・きのこ・海藻・大豆製品など、3種類以上の具がたっぷり入っていると理想的です。

ちなみに、健常かつ普通の体格の妊婦さんの場合、1日あたりのカロリー摂取量は非妊娠時に比べて、初期には+50 Kcal、中期には+250 Kcal、後期には+450 Kcal、授乳中は+350 Kcal(肥満の方は個別対応)が目安とされています。

*肥満とは、妊娠前のBMI(体重〔kg〕÷身長〔m〕÷身長〔m〕)が25.0よりも大きい場合をいいます。

 

 

○ つわりの時の工夫

妊娠初期のつわりの時期は、嘔気嘔吐や食欲不振、においが気になるなど、食事をとることが難しくなります。この時期ばかりは、あまり栄養バランスを気にすることなく、食べられるものを少量ずつ分食して頂くといいでしょう。

特に、ヨーグルトやプリンなど冷たくて口当たりの良い物や、果物、酢の物など酸味のあるものなどはお勧めです。また、カロリーメイトゼリーなどは手軽にカロリーを摂取できるので補食としてご利用頂けます。

 

 

○ 貧血・便秘の予防

妊娠中は、循環血流量が増えて血液が薄まることや、赤ちゃんに鉄分を供給していることから、鉄欠乏性の貧血になりがちです。そのため、貧血を予防するために鉄分の多い食品・肉や魚などの動物性たんぱく質・鉄の吸収を助けるビタミンCや葉酸などが多く含まれる食品の摂取に心がけましょう。若鶏肉レバー、厚揚げ、牛ひれ赤肉、小松菜、豆乳、青海苔、あさり、かつお、いりゴマなどがお勧めです。

 

 

○ 便秘の予防

妊娠中はホルモンの影響で腸の動きが低下し、また子宮の増大に伴う腸管の圧迫などにより、便秘になりがちです。便秘の予防には規則正しい生活や適度な運動と十分な水分摂取が大切です。それらに加えて、納豆、アボカド、ごぼう、切り干し大根、りんご、バナナなど食物線維の多い食物の摂取に心掛けましょう。

 

 

妊娠中の体重増加の目安は妊娠前の体格によって変わります。
栄養バランスの取れた食事に心掛けながら、妊娠前のBMIが18.5未満の方は9~12kgの増加、BMI18.5が以上25以下の方は7~12kgの増加、BMIが25よりも多い方では5kgまでの増加を目指しましょう。