院長コラム

女性アスリートのヘルスケア

4月16日は「女子マラソンの日」だそうです。1978年のこの日、日本初の女子フルマラソンの大会が開催されましたが、第一回の参加者は49名だったとのこと。
今ではオリンピックの女子マラソンで金メダルを取るなど、日本の女子スポーツ界は世界レベルになってきました。
その反面、ヘルスケアの観点では多くの問題点もあるようです。
今回は、「女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編 2016年度版」を参考に、女性アスリートのヘルスケアについて情報を共有したいと思います。

 

月経周期と競技パフォーマンス

月経周期によって競技パフォーマンスが変化する可能性が指摘されています。ある調査によると、月経期には4割、黄体期(排卵から月経が始まるまでの期間)には3割のアスリートが「体調が悪い」と回答したそうです。
月経期には月経困難症のため、黄体期には月経前症候群(PMS)のため、体調不良をきたす方が決して少なくないと考えられます。
月経困難症、PMSの治療として、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)が有効であり、ドーピング規制に引っかかることもないためお勧めです。
尚、漢方薬は非常に有用な薬剤ですが、ドーピング規制の対象になる可能性があるため、女性アスリートの方は長期服用を避けた方がいいでしょう。

 

女性アスリートの健康上3つの問題(女性アスリートの三徴)

女性アスリートの健康管理上の問題点として、以下の3つが挙げられます。

  • 利用可能エネルギー不足

利用可能エネルギーとは、「摂取エネルギー」と「運動消費エネルギー」の差です。
「利用可能エネルギーが不足している」とは運動消費を補うだけの摂取が行われていないことを意味しており、卵巣機能が低下し、月経不順・無月経となる可能性があります。
予防するためには、トレーニング量を適正にすること、そして適切なカロリーの食事を摂取することが大切です。

 

  • 無月経

運動による体脂肪減少にともない女性ホルモンの合成が障害されることがあります。
また、利用可能エネルギーが不足すると、生命の維持が優先され、“子孫保存のための機能”つまり「排卵」といった卵巣機能は“軽視”あるいは“無視”されるようです。その結果、月経不順・無月経となってしまうことがあります。
月経不順になった段階で、エネルギー摂取量や体重が低下していないか、早めに確認することが重要です。

 

  • 骨粗しょう症

女性ホルモンのエストロゲンには、骨量を増加させる作用があります。もし、卵巣機能が低下しエストロゲン分泌が減少すると、骨量が低下し、骨粗しょう症、つまり疲労骨折をきたしやすい体になってしまいます。
また、低体重になることも、骨への負荷が減少してしまうため、骨量が低下する原因となります。
骨折しにくい体づくりのためにも、卵巣機能と適切な体重を維持することが大切です。

 

女性アスリートの三徴の中心は利用可能エネルギー不足です。
指導者・コーチや養護教諭の先生と相談し、適切なトレーニングを行うことが大切です。
特に、マラソンなどの陸上長距離選手、体操・新体操などの審美系のアスリートの方は気を付けましょう。