院長コラム

低用量ピル(OC・LEP)のマイナートラブルと漢方薬

避妊効果が最も高い経口避妊薬(OC)や、月経困難症治療薬として大変有用な低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は、もっと多くの方に服用して頂きたい薬剤と考えています。
ただし、OC・LEPの服用に抵抗感がある方は少なくありません。
その理由は様々ですが、頭痛、嘔気、不正出血といった比較的軽い副反応(マイナートラブル)の影響もあるかと思われます。
今回、「女性診療で使えるヌーベル漢方処方ノート」を参考に、OC・LEPのマイナートラブルに対する漢方薬について説明します。

 

頭痛

OC・LEP服用前に問診を行いますが、閃輝暗点といった前兆のある片頭痛のある方は、血栓症という重大な副作用のリスクが高いため、OC・LEPは禁忌となります。前兆のない片頭痛の方は服用可能ですが、慎重に投与する必要があり、症状の増悪がみられた場合は、片頭痛を診て頂いているかかりつけ医の診察が必要です。
ここでは、OC・LEPを服用してから認められる軽度な頭痛を対象にします。
一般的にロキソニンなどの鎮痛剤を頓服することが多いですが、長期にわたって服用する必要がある場合には、漢方薬を併用することもあります。
頭痛は“むくみ”が原因の一つともいわれているため、むくみに対する改善効果が高い「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」「五苓散(ゴレイサン)」が有効といわれています。

 

嘔気

嘔気もOC・LEP服用時によくみられる副作用の一つです。
当院では、強い嘔気に対しては、プリンペランなどの制吐剤を頓服することがあります。
ただし、比較的軽い嘔気が長期間持続する場合や、嘔気に対する予防効果を期待する場合には、漢方薬の継続服用が有用です。
もともと胃腸が弱い方や、“みぞおちのつかえ”がある方には「六君子湯(リックンシトウ)」が有用のようです。当院では、悪心、嘔吐だけでなく、頭痛、むくみ、めまいなどにも効果がある「五苓散」を処方することが多いです。

 

不正出血

不正出血はOC・LEPの最も多い副作用の一つで、服薬継続に影響を及ぼします。
不正出血の対策として、OC・LEPの薬剤の変更、または飲み方の変更、止血剤の屯用などがあります。
それでも止血しない時には、止血効果のある漢方薬「キュウ帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)」の併用が有用です(保険適応は痔出血)。
当院では、少量の出血が持続する場合、止血するまでOC・LEPに併用することがあります。

 

OC・LEPのマイナートラブルは、自然に軽快することも少なくありません。
ただし、マイナートラブルが原因で、生活の質の低下やOC・LEP服用の中止を招く恐れもあります。
少しでもマイナートラブルを改善するため、当院では今後も漢方薬を積極的に活用していきたい、と考えています。