院長コラム

予期しない妊娠を防ぐための3つの心得

夏は開放的な気持ちになり、若い人達は性的な活動が活発になる季節です。しかし、「性感染症」と「予期しない妊娠」には、十分に気を付けないといけません。
今回は、予期しない妊娠を防ぐための3つの心得について、「女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編2016年度版」(日本女性医学学会編)などを参考に説明します。

 

 

心得その1 セックスをしない

様々な避妊法がありますが、100%確実な避妊法はありません。絶対に妊娠してはならない状況であるのならば、セックスしてはいけません。性感染症予防のため、性交する際には男性がしっかりコンドームを装着することが前提ですが、それでも一般的なコンドームの使用の場合、約20%が妊娠に至るといわれています。

また、腟外射精は避妊法とはいいません。男性が自らの意志力で、射精をコントロールできるとは限りません。コンドームを装着していないペニスが腟内に挿入された時点で、妊娠のリスクが発生することを是非認識して下さい。

 

 

心得その2 日頃から低用量ピル(OC)または低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)を服用する

コンドーム以外にも子宮内避妊具や避妊手術など様々な避妊法がありますが、10~20代で出産経験のない方の場合、OCまたはLEPが最も避妊法として適しているといえます。

OC・LEPの作用は大きく3つあります。

① 排卵を抑制する
脳下垂体から卵巣に作用するホルモンの分泌を抑えることにより、卵巣にある卵胞(卵子を入れている袋)を発育させず、排卵を起こさせません。もし精子が子宮から卵管に入ってきたとしても、卵子と受精することはありません。

 

② 子宮内膜を薄くする

ホルモンの効果で子宮内膜は菲薄化されます。すると、万が一排卵して、卵子と精子が受精したとしても、受精卵が薄い内膜に着床することはできません。つまり、最終段階で妊娠の成立を阻止します。

 

③ 子宮頚管の粘液を粘稠にする

子宮頚管からは粘液が分泌されます。排卵前には精子を受け入れやすいように、粘稠性が低い(ツルーッとした)粘液になり、排卵後は雑菌などが子宮内に入らないように、粘稠性が高い(ベトッとした)粘液になります。OC・LEPは、常に子宮頸管粘液の粘稠性を高めることで、精子が子宮に入ることを阻止します。

ちなみに避妊目的のみで使用する薬剤をOC(いわいるピル)、月経困難症治療薬として使用する薬剤をLEPといいます。OC・LEPの避妊効果は非常に高く、飲み忘れずに理想的な服用であれば、避妊失敗率は0.3%ほどです。

 

 

心得その3 もしもの時は緊急避妊薬を服用する

女性はOC・LEPを服用し、男性はコンドームを使用することが、性感染症予防的にも、予期せぬ妊娠を避ける意味でも非常に効果的です。しかし、女性がOC・LEPを服用しておらず、コンドームが破れたり、腟内に残ってしまった場合や、そもそもコンドームを使用しなった場合は妊娠する可能性があります。その場合、排卵を遅らせて受精させないようにするため、緊急避妊薬を服用することになります。

避妊をしないで行なった性交後72時間以内に「レボノルゲストレル錠1.5mg」を1錠服用しますが、性交から早ければ早いほど効果的です。「レボノルゲストレル錠1.5mg」服用者全体での避妊失敗率は2%といわれていますが、排卵直前であった場合は排卵を阻止することが難しくなります。また、服用後数日以内に性交を持つと、丁度排卵期とあたるため、妊娠してしまう可能性があります。

 

 

緊急避妊はあくまでも緊急避難的な方法であって、繰り返し使用するものではありません。当院では、緊急避妊薬「レボノルゲストレル錠1.5mg」服用された方全員に、翌日からOCを服用してもらい、次回月経まで性交を控えて頂いています。
妊娠を希望されないカップルでは、「女性はOC・LEPを服用すること」、「男性はコンドームを適切に装着すること」が、セックスするための必要条件であると考えています。