院長コラム

なぜ新生児聴覚スクリーニング検査をお勧めするのか?

先日「新生児聴覚スクリーニングとは~産科医が果たす役割と重要性、その後の社会すステム・療育について~」というセミナーへ参加して参りました。国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科診療部長の先生をはじめ、この分野のスペシャリストの耳鼻咽喉科の3名の先生方と、新生児聴覚スクリーニングの普及や環境整備にご尽力されている昭和大学産婦人科の先生のご講演を伺い、大変勉強になりました。
今回は、このセミナーの内容と「新生児聴覚スクリーニングマニュアル」「新生児のプライマリ・ケア」(日本小児科学会編集)を元に、新生児聴覚スクリーニング検査の内容と意義について共有し、当院の取り組みについてもお伝えしたいと思います。

 

 

新生児聴覚スクリーニング検査の意義

平成13年度から全国的に新生児聴覚スクリーニング検査は行なわれており、本年平成31年4月からは東京都でも3,000円の助成金が支払われるようになりました。国を挙げての事業ですが、それだけの意義が新生児聴覚スクリーニング検査にはあります。

 

① 先天性難聴の頻度が少なくない

先天性難聴の頻度は1,000人に1~2人といわれています。ちなみに、新生児全例無料でスクリーニング検査を行なっている先天性代謝異常症の頻度は、比較的高頻度の先天性甲状腺機能低下症でも3,000人に1人、フェニルケトン尿症では35,000人に1人といわれており、稀なものでは980,000人に1人の疾患もスクリーニング検査項目に含まれています。

それらと比較すると、先天性難聴の頻度は寧ろ高いといえます。

 

② 早期発見・早期支援が聴覚障害児のQOL(quality of life)を向上させる

言語発達の支援には、適切な時期が存在しています。生後6か月まで適切な療育を受けなかった場合、言語発達が阻害され、認知、社会性、行動、注意力、学習能力などの発達が障害されます。

一方、生後6か月までに療育が開始された場合、3歳時点での言語能力が改善し、健聴児に近くなるといわれています。そのためにはできるだけ早期(生後1か月以内)にスクリーニング検査を行ない、3ヵ月までに精密診断を終わらせておく必要があります。

 

③ 出生時には異常を示さないため、検査しないとわからない

心奇形などは妊娠中の胎児超音波検査で判明する場合があり、口唇口蓋裂は胎児期、遅くとも出生直後には診断が可能です。

一方、先天性難聴の赤ちゃんは全く症状がなく、一般的な新生児診察で診断することはできません。したがって、先天性難聴の児を漏れなく発見するためには、赤ちゃん全員にスクリーニング検査を行なう必要があります。

 

 

当院での検査の流れ

お母さんの同意が得られた赤ちゃんに対して行ないます。生後24時間以内だと外耳道内の羊水貯留などで再検査率が高くなるため、通常は出生2日目に行ないます。

聴覚検査には主に2種類ありますが、当院では、より正確な「自動聴性脳幹反応(AABR)」を用いた方法を行なっています。その結果、「パス(pass)」であれば「現時点では聴力異常なし」と判定します。「要再検査(refer)」となった場合は翌日に再検し、それでも「要再検査」となった場合は、国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科などへ紹介致します。

尚、「パス」だからといって、今後難聴にならないとは限りませんので、聴覚に関して何か気になる点がございましたら、是非耳鼻咽喉科を受診して下さい。

 

 

当院での新生児聴覚スクリーニング検査は7,500円と設定しておりますが、東京都の方は3,000円の助成金がありますので、自己負担金4,500円で検査が受けられます。
聴覚障害の早期発見・早期療育は非常に大切です。
お子さんの将来のために、新生児聴覚スクリーニング検査にご同意頂きます様、何卒宜しくお願い申し上げます。