院長コラム

中高年女性の乾燥肌・皮脂欠乏症に対する治療

冬になると皮膚の乾燥やかゆみに悩まされる方も多いと思います。
特に閉経以降はエストロゲンの低下に伴い、皮膚の潤いが低下する傾向にあります。
今回は乾燥肌や皮脂欠乏症に対する治療について説明します。

 

ホルモン補充療法(HRT)

エストロゲンは皮膚に対して、コラーゲンの増加、皮脂分泌の亢進、水分保持能のアップを促します。
したがって、閉経などによりエストロゲンの分泌が低下すると、皮膚が乾燥し、しわが増え、弾力が低下します。
ある調査によると、乾燥肌は更年期女性の20~40%に見られるとのことです。そのような方にHRTを行うことで、コラーゲン量が増加し、乾燥肌を予防できたとの報告もあります。
ただし、大規模な臨床試験が行われていないため、皮膚症状に対する改善効果のみを目的としたHRTは推奨されていません。
もし、のぼせ、発汗などの更年期障害がみられ、乾燥肌にも悩んでらっしゃるのであれば、HRTはお勧めです。

 

皮膚保湿剤(ヘパリン類似物質製剤:ヒルドイドなど)

皮膚の表面の脂が減少することにより、皮膚の水分が減少し乾燥する疾患を皮脂欠乏症といいます。
悪化すると赤くなり、皮膚がひび割れ、かゆみが増強し、皮脂欠乏性湿疹に至る事もあります。空気が乾燥しやすい秋から冬に見られることが多く、加齢も要因の一つです。
あまり症状が強くなければヘパリン類似物質製剤などの保湿剤が有用です。
当院では、延びやすく、皮膚を保護する効果が高い「ヒルドイドソフト軟膏0.3%」を処方することが多いですが、湿疹が見られたら、ステロイド外用剤(ロコイド軟膏)などを併用します。

 

漢方薬:温清飲(ウンセイイン)・当帰飲子(トウキインシ)

更年期障害・月経困難・月経不順・月経過多などに用いることがある「温清飲」は、末梢血管の血流を改善し、皮膚炎・血管炎などの炎症を抑える作用があります。そのため、皮膚の発赤・かゆみ・乾燥を伴った皮膚疾患にも使用されています。
比較的体力の低下した方の乾燥性の皮疹、かゆみ、皮脂欠乏症には、「当帰飲子」が勧められます。冷えにも効果があるこの漢方薬は、寒くて乾燥するこの季節にピッタリかもしれません。

 

 

乾燥肌や皮脂欠乏症を悪化させないためには、薬物療法だけでなく、日常生活も注意が必要です。
加湿器などで適度な湿度を保ち、入浴時は熱いお湯は避け、体を強く洗って皮脂をとり過ぎないようにしましょう。
今後も寒く乾燥した日々が続きますので、お気を付け下さい。