院長コラム

世代別の不正性器出血の診察

思春期・性成熟期・更年期・老年期のどの年代であっても、不正性器出血は起こり得ます。
今回は、女性のライフステージから見た、非妊娠時の性器出血についてお話します。

 

 

思春期の不正出血

初経後数年間は卵巣機能が未熟で、ホルモン分泌も不安定であるため、無排卵に伴う不正出血をきたすことが多い時期です。

通常、卵巣からエストロゲンという子宮内膜を厚くさせるホルモンが出ており、排卵後は子宮内膜の増殖を抑えるプロゲステロンというホルモンが、黄体という組織から分泌されます。

ところが、排卵しないとプロゲステロンが分泌されず、エストロゲンだけが持続的に子宮内膜に刺激を与えし続けることになります。その結果、内膜が破綻し、出血を来たすようになります。これをエストロゲン破綻出血といい、思春期女性に多く見られます。

 

 

性成熟期の不正出血

この時期でも無排卵性出血は見られますが、性成熟期の不正出血のほとんどは、排卵に伴う出血といわれています。

プロゲステロンは、通常黄体から約2週間分泌され、妊娠に至らなければ、エストロゲンとともに減少し、そのため内膜が剥がれ落ち、月経となります。

ところが、黄体機能が低下していると、通常よりも早くプロゲスチンが減少してしまい、フライング気味に内膜が剥がれ始め、出血していまいます。これを黄体期出血といい、性成熟期に多く見られます。

 

 

更年期~老年期の出血

更年期の時期は卵巣機能が低下し始めるため、ホルモン分泌が不安定になり、月経周期が短くなったり、あるいは長くなったりすることで不正出血が起こってきます。

ある意味、閉経に向けての生理的な変化であるといえますが、更年期~老年期に性器出血がみられた場合は、子宮体がんなどの子宮内膜病変が心配な時期でもあるため、子宮内膜細胞診など十分な検査が必要になります。

また、子宮筋腫などの器質的疾患がないにもかかわらず、突然多量の出血を来たすこともあるため、貧血にならないように適切な治療が必要になることもあります。

 

 

不正出血に対する薬物療法

(1) 止血剤

少量であれば「アドナ」「トランサミン」といった止血剤を5~10日間程度処方することがあります。単独投与だけでなく、ホルモン次亜や漢方索と併用することもあります。

(2) ホルモン剤

エストロゲン製剤、プロゲスチン製剤、エストロゲン・プロゲスチン配合剤(低用量OC・LEP)を状況に合わせて処方します。

(3) 漢方薬

「キュウ帰膠艾湯(77番)」の効用は「痔出血」ですが、不正性器出血、流産後の出血に対しても止血効果が認められているため、単独処方もしく止血剤やホルモン剤と併用することがあります。

 

 

思春期から更年期にかけては、低用量ピルやHRTといったホルモン療法を施行中に、性器出血を認めることも珍しくありません。
使用しているホルモン剤の種類・量の変更や止血剤・漢方薬との併用など、不快な出血を少しでも減少させるよう、更に工夫して参ります。