院長コラム

不眠を改善するための漢方薬

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中、様々なストレスで不眠に悩まされている方も少なくありません。免疫力を落とさないためにも良質な睡眠が必要です。不眠を改善するためには、生活習慣を整えることが基本ですが、場合によっては漢方薬がお役に立つかもしれません。
今回は、不眠を訴える方に用いることが多い漢方薬について、情報を共有したいと思います。

 

抑肝散(ヨクカンサン)

虚弱な体質で神経が高ぶる方の不眠症や神経症などに用います。いらいらが強く、すぐに怒りたくなる様な時に気持ちを静めてくれます。婦人科領域では、月経前症候群や更年期障害の方に処方することが多い漢方薬です。また、非常に体力が低下しており、症状がより慢性化している場合は、「抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)」を用いることがあります。

 

酸棗仁湯(サンソウニントウ)

心身が疲れ弱って眠れない方に用います。慢性疾患患者さんやご高齢の方に処方することが多く、精神不安や神経過敏などを伴う不眠も適応になります。

 

加味帰脾湯(カミキヒトウ)

貧血、精神不安、神経症のある不眠に処方します。心身ともに疲れているのにもかかわらず、眠りが浅い方に有効であると言われています。いらいらや怒りを抑える効果や抗うつ作用も期待でき、当院では抑肝散の効果が不十分な方に用いることがあります。

 

半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)

つわりやパニック様症状(のどに何かが詰まる感じ)などに用いる漢方薬ですが、不安感を抑え、不眠にも効果が期待できます。

 

女神散(ニョシンサン)

産前産後の神経症や、期待と不安の狭間で気持ちが強く揺さぶられる時のストレスに効果があるといわれています。当院では、妊娠中や授乳中の不安感や不眠に対し、睡眠薬の服用に抵抗のある方に処方することがあります。

 

温経湯(ウンケイトウ)

月経不順や更年期障害に用いる温経湯は、足腰の冷え症にも効果があり、不眠にも適応があります。不眠が強い更年期障害の方には、ホルモン補充療法に併用することもあります。

 

 

これらの不眠に適応のある漢方薬の中から、体格や症状に合った適切な薬剤を処方して参ります。
ただし、漢方薬の効果が弱い場合には、睡眠薬の併用やメンタルクリニックの受診をお勧めする場合がございます旨、ご了解下さい。