院長コラム

咳喘息と妊娠

咳喘息とは咳を唯一の症状とする喘息の一種で、妊娠に合併することがあります。
今回は咳喘息と妊娠について説明します。

 

 

咳喘息の診断と特徴

咳には、持続器官が3週間以内の急性咳嗽、3~8週間持続する遷延性咳嗽、8週間以上持続する慢性咳嗽の3種類があり、咳喘息は慢性咳嗽の最多の原因疾患です。

気管支喘息は気道狭窄をきたしますが、咳喘息は胸部X線写真や聴診で異常は認められず、発作時にも低酸素血症になることはありませんので、あまり母体および胎児への影響を心配しなくてもいいでしょう。

尚、咳喘息の咳は夜間から早朝にかけて悪化しやすく、季節の変わり目や梅雨・台風シーズンなど、特定の季節に症状が出現する方もいらっしゃいます。

 

 

妊娠が咳喘息に与える影響

咳喘息の好発年齢は20~40歳代で、女性が60~70%を占めるといわれています。そのため、咳喘息の患者さんが妊娠するケースも珍しくありません。

通常の気管支喘息と同様に咳喘息の場合も、妊娠により症状が軽快、不変、増悪する割合が、ほぼ1/3ずつといわれています。

尚、悪化するケースでは妊娠中期に悪化しますが、出産直前には軽快することが多いといわれています。

 

 

妊娠中の咳喘息治療

妊婦さんが、薬物の胎児への影響を過度に心配するあまり、自己判断で減量・中止するため喘息が悪化することがあります。ほとんどの喘息薬は胎児に影響することはないため、妊娠中も確実に治療を継続することが大切です。

内科や耳鼻咽喉科で妊娠前から処方されている薬剤が、吸入ステロイド薬、吸入β2刺激薬(吸入ステロイド薬との配合剤を含む)などの吸入薬であれば、妊娠数週を問わず積極的に使用が可能です。

ちなみに、慢性咳嗽の患者さんが原因疾患を明らかにする際、あえて吸入β2刺激薬を使用し、その有効性を確認することで咳喘息の診断をつける、ということもあります。

 

 

胃食道逆流症の合併に注意

妊娠中は胸焼けや呑酸など、胃食道逆流症をきたしやすく、食道症状が咳を悪化させることがあります。

妊娠中に咳喘息と胃食道逆流症が合併している時には、気管支拡張剤だけでなく、制酸剤が必要になるケースがあります。

 

 

3~8週間以上咳が持続する場合は咳喘息の可能性があります。放置すると気管支喘息に進展することがあるため、我慢せずに内科や耳鼻咽喉科を受診し、妊娠中であってもしっかり治療しましょう。