院長コラム

「世界エイズデー」今年度キャンペーンテーマ “UPDATE!エイズ治療のこと HIV検査のこと”

12月1日は世界エイズデーです。エイズ問題への人々の意識を高めることを目的に、世界保健機構(WHO)が制定しました。
今年度のテーマは“UPDATE!エイズ治療のこと HIV検査のこと”です。近年、治療法の進歩によりHIV陽性者の発症予防が可能になり、感染リスクが低下してきました。
今回はHIV感染についての情報を共有したいと思います。

 

 

HIVとAIDS

HIV感染症とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することで、免疫力が低下する病気です。多少免疫力が低下するだけでは大きな健康被害にはなりませんが、免疫力低下が進行すると、ちょっとした感染症にかかっただけでも命を落とす危険が増大します。このように様々な合併症(指定された指標疾患)を発症した場合をエイズ(AIDS)といいます。

日本では近年1,500人前後が新たにHIV感染およびエイズを発症していると報告されていますが、そのうち1000人前後がHIV感染者、400~500名がエイズ患者といわれています。

感染経路で最も多いのは性的接触による感染で、HIV感染者の精液・腟分泌物などに含まれるウイルスがが相手の性器・肛門・口などの粘膜や傷口を通って感染します。もちろん、異性間でも、同性間(特に男性同士)でも感染の可能性があります。感染を少しでも予防するためには、コンドームを最初から適切に使用すること。これ以外にはありません。

 

 

HIV感染の4段階

(1) 初期感染期

HIV感染後4週間頃にはHIVの量が増え、免疫システムで重要な役割を担うCD4陽性リンパ球の数が減ります。その頃、発熱、咽頭痛、発疹、口腔潰瘍、口腔カンジダなどの症状が現れることが多いですが、見逃されることも少なくありません。それらの症状が1か月程続いた後、免疫の働きでウイルス量は減少し、CD4陽性リンパ球数も一旦回復します。

 

(2) 無症候性キャリア期

感染から6か月後にはウイルスの低下がおさまり、特徴的な症状もみられない時期が数年から10数年続きます。

 

(3) エイズ関連症候群期

そのうち再びCD4陽性リンパ球数が低下し、ウイルス量が増加し、原因不明の発熱、下痢、体重減少をきたします。

 

(4) エイズ発病期

その後もCD4陽性リンパ球数が低下し続けると免疫不全となり、カリニ肺炎などエイズ指標疾患を1つでも発症した場合をエイズ発症とします。

 

 

抗HIV治療薬について

現在の医学では、HIVに一度感染したら、完全にウイルスを取り除くことはできません。しかし、抗HIV治療薬を適切かつ継続的に使用することにより、HIVの増殖を押さえ、CD4陽性リンパ球を維持することが可能となってきました。以前のように、もはやHIV感染症は「不治の病」ではなく、コントロールが可能な時代になっています。

ただし、エイズ発症後でも適切な治療を継続することで普通の生活を送ることも、安全に分娩することも可能になったとはいえ、困難であることは間違いありません。

より治療効果を高めるためには、早期にHIV感染を発見し、エイズが発症する前の無症候性キャリア期のうちに、専門医による適切な治療をすることがとても大切です。

 

 

世田谷区保健所ではHIVと性感染症の検査相談を行っています。検査は無料、匿名、予約不要ですので、気になる方は世田谷のホームページでご確認下さい。
ただし、感染の機会があってから60日以上経過した後、血液検査をお受け下さい。感染の初期には検査で陰性になる恐れがあります。
尚、当院では自由診療で約8000円となります旨、ご了承下さい。