院長コラム

淋菌感染症の症状・治療

性感染症というと、最も罹患者が多いクラミジア感染症、疼痛が強い外陰ヘルペス、イボが気になる尖圭コンジローマ、最近急増中の梅毒が思い浮かぶかもしれません。しかし、あまり自覚症状はみられないものの、日常診療で時折遭遇するのが淋菌感染症です。
今回は、「STI性感染症アトラス改定第2版」(秀潤社)、「日本医師会雑誌 208年3月号 性感染症―今、何が問題か」を参考に、淋菌感染症の症状と治療について説明します。

 

 

淋菌感染症の原因

淋菌感染症は淋菌による感染症で、高温や消毒薬に対して抵抗力が弱いため、ほとんどが性行為により感染します。しかも、1回の性行為による感染伝播率は約30%といわれています。

また、淋菌がトイレの便器に18時間、濡れタオルで10~24時間生存したとの報告もあり、膿汁に汚染された指や衣類の接触で感染することもあります。

もし、妊婦さんの頚管内・腟内に淋菌が存在していた場合は、経腟分娩の際に産道感染をきたし、新生児が結膜炎となってしまう可能性があります。

 

 

淋菌感染症の症状と診断

女性が性交で淋菌に感染すると、子宮頚管炎をきたし、膿のような帯下を認める方が多いですが、無症状の方も少なくありません。淋菌感染症の診断は、帯下の培養検査やPCR検査で行うことが多く、子宮頚がん検診の細胞診で発見されることもあります。

子宮頚管炎を放置していると、その後上行感染をきたし、子宮内膜炎・卵管炎・骨盤腹膜炎に進展し、発熱や下腹部痛をきたすこともあります。

また、淋菌が尿道へ感染し尿道炎を起こすと、排尿痛を認めることがあります。その場合は、尿培養検査で診断することになります。

性器淋菌感染症の患者さんの咽頭から、高頻度で淋菌が検出されているとの報告があります。これはオーラルセックスが原因と思われるため、あらゆる性行為に注意が必要です。

尚、クラミジア感染症と淋菌感染症を併発している患者さんは少なくないため、クラミジア感染症疑いの方や治療後の方に対して、仮に症状がなかったとしても淋菌検査を行うことがあります。

 

 

淋菌感染症の治療

淋菌による子宮頚管炎・尿道炎・骨盤腹膜炎・咽頭炎に対して、セフェム系抗生剤である「ロセフィン1g」点滴静注の単回投与が勧められており、当院でも外来診療として約30分で点滴投与しています。ほとんどは1回の投与で治癒しますが、重症度によっては1日1g1回の投与を7日間まで行うこともあります。

淋菌感染症の怖いところは、抗生剤に対する耐性を獲得しやすいことです。そのため、治療後には7日以上休薬期間をおいて、淋菌が陰性となることを確認する必要があります。

 

 

淋菌感染症を予防するためには、オーラルセックス含めて全ての性行為の際、パートナーにコンドームを装着してもらわなければいけません。
帯下増量がみられた場合やパートナーが尿道炎と診断された場合は、淋菌感染症の可能性がありますので、早めに婦人科を受診しましょう。