院長コラム

胎盤関連産科合併症・早産の予防としてのマルチビタミンサプリメント

妊娠する1か月前から妊娠6週末まで葉酸をサプリメントで1日400μg摂取すると、二分脊椎などの神経管閉鎖障害のリスクが軽減することが広く知られています。そのため、妊娠初期まではきちんと服用する方は多いのですが、その後服用を止めてしまう方が少なくありません。
葉酸および葉酸の作用をサポートするビタミンB群は、全妊娠期間を通じて非常に有用な栄養素であるため、途中でサプリメント服用をやめてしまうことは非常にもったいないと思われます。
また、妊娠前から初期にかけて葉酸を服用していなかった方の中には、妊娠中期以降に葉酸を服用し始めても意味がない、と誤解されている方もいらっしゃいます。しかし、葉酸・ビタミンB群には神経管閉鎖障害のリスク軽減以外にも様々な意義があるため、中期からの服用でも決して遅くはありません。
今回は、「産婦人科の実際2019年4月号 早産予防とサプリメント」(金原出版)を参考に、神経管閉鎖障害リスク軽減以外の、妊婦さんに対する葉酸・ビタミンB群の有用性について説明します。

 

 

早産の原因

妊娠22週以降、妊娠37週未満の分娩を早産といいます。早産児は正期産(妊娠37週以降、妊娠42週未満)の赤ちゃんと比べて未熟な状態で生まれてきますので、できるだけ早産にならないように治療・予防する必要があります。

早産の原因として、絨毛膜羊膜炎などの感染症例、頚管短縮例、早産既往例などにみられる「規則的な子宮収縮に、進行性の頚管変化を伴う切迫早産」が挙げられますが、これは早産全体の半数未満といわれています。

実は早産の半数以上は、胎児発育不全・妊娠高血圧腎症・常位胎盤早期剥離などの「産科合併症に対する治療としての早産」が占めているとの報告があります。したがって、早産全体を減らすためには、母体が産科合併症にならないよう予防することがとても重要です。

 

 

胎盤関連産科合併症・早産と葉酸・ビタミンB群

治療早産の原因である胎児発育不全・妊娠高血圧腎症・常位胎盤早期剥離などは胎盤関連産科合併症と呼ばれ、その主な原因は胎盤における血管内皮障害であることが知られています。実は、ホモシステインというアミノ酸が血管内皮に蓄積すると、血管内皮が障害されることがわかっています。つまり、胎盤血管内皮のホモシステイン蓄積が、胎盤関連産科合併症を引き起こすと言えます。

葉酸とビタミンB群(B6,B12)の不足はホモシステイン蓄積をきたすことが知られており、葉酸とビタミンB群(B6,B12)のマルチビタミンサプリメントはホモシスチンの代謝を促すと報告されています。

さらに、マルチビタミンサプリメントは胎児発育不全・妊娠高血圧腎症・常位胎盤早期剥離など胎盤関連産科合併症、そして早産の発生率を減少させるとの報告もみられます。特に早産予防に関しては、妊娠前と初期だけでなく、全妊娠期間を通じて長期に(12週間以上)摂取することでより効果があると言われています。

 

 

「エレビット」の特徴

当院で取り扱っておりますマルチビタミンサプリメントの「エレビット」は、二分脊椎予防に必要な葉酸400μgを上回る800μgが含まれており、ビタミンB6,B12も十分に補うことができます。そのほか、ビタミンC,Dや鉄など、合計18種類のビタミンとミネラルが配合されているため、これから妊娠を考える女性や妊婦さんにとって、非常に有用なマルチビタミンサブリメントといえます。

 

 

妊娠を計画した段階でマルチビタミンサプリメントの服用を習慣化し、妊娠期間中も継続して服用することにより、胎児の神経管閉鎖障害リスクだけでなく、胎盤関連産科合併症や早産のリスクも減少させることが期待できます。
日頃から栄養バランスを考えた食生活に心がけつつ、マルチビタミンサプリメントを積極的に摂取するようにしましょう。