院長コラム

新型コロナウイルス感染した妊娠さんが使用できる解熱・鎮痛・抗消炎剤

新型コロナウイルス感染が第7波に入り、感染する妊婦さんが増えてきました。
妊娠後期の妊婦さんは重症化しやすい事が知られていますが、ほとんどの方は入院できずに自宅療養となっています。その場合、発熱、頭痛、咽頭痛などに対する薬剤は必需品です。
今回はコロナ感染した妊娠さんが使用できる解熱・鎮痛・抗消炎剤についてまとめてみます。

 

「アセトアミノフェン(カロナール)錠」が第一選択

アセトアミノフェン(カロナール)錠は非ピリン系解熱鎮痛剤で、解熱効果、鎮痛効果は中等度ですが、抗炎症作用(火事に対する消火のような作用)はほとんどありません。
中枢神経に働きかけ、皮膚血管を拡張することで解熱効果を発揮し、刺激伝導を抑制することで鎮痛効果を示します。
ただし、痛み物質であるプロスタグランジン(PG)の合成を阻害する働きが弱いため、強い痛みには効きづらいかもしれません。
その反面、副作用が少なく、胎児への影響はほとんどないため、妊婦さんに対して比較的安心して使用できます。
それでも、特に妊娠28週以降の後期、大量に服用すると胎児の心臓に悪影響を及ぼす可能性があるため、必要最小限に止めましょう。

 

「ロキソニン錠」は妊娠28週未満まで服用可能

ロキソニン錠は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の代表的な薬剤で、痛み物質PG合成を阻害し強力な解熱・鎮痛・抗消炎作用を発揮します。
妊娠後期に服用すると、胎児の心臓に悪影響を及ぼす可能性があるため禁忌ですが、妊娠28週未満までであれば服用可能です。
カロナールの効果が不良な場合は服薬できますし、コロナ感染拡大でカロナールが品薄状態となっている現在、妊娠中期までの方であればむしろ積極的に使用してもいいかもしれません。
ただし、NSAIDsの中でも、インドメタシン(インダシン)錠、ボルタレン錠などは妊娠全期間通じて禁忌ですのでご注意下さい。

 

上記以外にも、咽頭痛が強ければ抗炎症作用を持つ「トランサミン錠」を処方することがあります。
また、漢方薬をご希望の方には、感冒初期に用いることが多い漢方薬で、頭痛・肩こりに有効な「葛根湯」を使用しています。
ただし、上記の薬剤を服用したにもかかわらず症状が軽快しない場合は、是非かかりつけ医にご相談下さい。