院長コラム

将来の妊娠を見据えた思春期女性の健康課題対策 ~月経困難症~

女性はホルモン環境の劇的な変化から、思春期、性成熟期、更年期、老年期のそれぞれのステージで、健康課題は異なります。
中でも思春期は女性の人生の基礎作りの時期であり、性成熟期での妊娠・出産を考える上でも、その健康課題の対策は非常に大切です。
今回は、「周産期医学2021年4月号」の内容を参考に、思春期女性の健康課題である月経困難症についてお伝えします。

 

月経困難症と子宮内膜症

月経痛を含む月経困難症は、最も多い月経トラブルです。
思春期女性の場合、子宮筋の過剰な収縮が月経痛の原因の一つと言われており、市販の鎮痛剤服用でしのいでいる方は少なくありません。
しかし、思春期で月経痛が強い方は、将来子宮内膜症になりやすいことが知られています。子宮内膜症は不妊症の原因となる病気で、生殖可能年齢の約10%にみられ、今後さらに増加することが予想されます。
実は、子宮内膜症患者さんの約50%が不妊症になり、逆に不妊症患者さんの約50%が子宮内膜症を合併していると言われています。
さらに、最近は10代での子宮内膜症発症も珍しくないため、早い時期からの子宮内膜症予防が望まれます。

 

子宮内膜症の原因

月経血は膣を通って外に流れるだけでなく、卵管を通って腹腔内へも逆流します。その際、経血に含まれている子宮内膜組織が卵巣や腹膜に根付いてしまうことがあり、これが子宮内膜症の原因の一つであると指摘されています。
つまり、子宮内膜症予防のためには、経血量を減らし、月経の回数も減らすことが望まれます。
また、子宮内膜組織から分泌される物質であるプロスタグランジンは痛み物質と呼ばれ、子宮筋を収縮させる働きもあります。このプロスタグランジンの合成を抑制するためには、子宮内膜組織自体の増殖を抑えることが有効であり、これが月経困難症の治療に繋がります。
以上のように、子宮内膜組織の増殖を抑え、経血量を少なくし、月経の回数も減らすことが、月経困難症の治療にも、子宮内膜症の予防にも有用です。

 

月経困難症治療・子宮内膜症予防の薬物療法

月経困難症の治療にも、子宮内膜症の予防にも有効な薬剤の代表格は、低用量ピルです。月経困難症に保険適応がある低用量ピルのことを低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)といい、様々な種類があります。
中でも、月経の回数を減らすことを考えると、まず「ヤーズフレックス配合錠」あるいは「ジェミーナ配合錠」による連続服用をお勧めします。
また、前兆のある片頭痛をお持ちの方など、エストロゲン含有のLEPが服用禁忌の方には、黄体ホルモン製剤「ディナゲスト錠0.5㎎」などがお勧めです。

 

「月経痛は病気でなく我慢するもの」という誤った考え方が、多くの女性を苦しめています。
特に思春期女性は月経困難症を治療することで、「今」を充実させ、「将来」の夢が広がります。
その初めの一歩として、月経困難症に苦しんでいる若い方々には、気軽に婦人科を受診して頂ければと願っています。