院長コラム

HPV感染と子宮頚がんとの関係

ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頚がんの原因となることが知られており、HPVワクチンが子宮頚がんの予防になることは、世界的に認められています。
2022年の今年、2013年から9年間続いていた「HPVワクチン定期接種勧奨の一時差控え」の方針が終了し、「HPVワクチンの積極的勧奨」という新たな時代に入ります。
今回は、「日本医師会雑誌」(2022年1月号)を参考に、HPV感染と子宮頚がんとの関係
について情報共有したいと思います。

 

HPVの特徴

HPVは人のみに感染するワクチンで、新型コロナウイルスなどのように“変異”を起こすことはなく、“同じ”ウイルスとして人類と共に生き続けています。
HPVには遺伝子の型別に約200種類のタイプがあり、発がん性の高いタイプを「ハイリスクHPV」といい、約13種類のタイプが知られています。
中でも、子宮頚がんの約50%を占めるのが“HPV16型”、次いで多い“HPV18型”は約20%を占め、この“ツートップ”で子宮頚がん原因の約70%を占めます。

 

HPVの感染の様子

全女性の約80%の方が、一生に一度はHPVに感染するといわれています。性交によって、男性が持っていたHPVが子宮頚部に移動すると、細かな傷の隙間から子宮頚部の上皮に侵入し、住み着き、潜伏します。
とはいっても、多くの場合、免疫力によってウイルスを排除したり、増殖を抑えることで、子宮頚がんになるのを防いでいます。
ただし、子宮頚部の上皮内に長期間ウイルスが潜伏したまま、免疫力が低下してしまうと、いずれウイルスが息を吹き返して、活性化してしまう恐れがあります。
残念ながら、現時点では、HPVを直接攻撃する治療薬はありません。

 

HPVワクチンの働き

HPVは子宮頚部の上皮内に留まり、血中に入り込むことはありません。つまり、自然の感染だけではウイルスを攻撃する抗体を作ることができないため、筋肉注射でHPVワクチンを接種して抗体を作ることが非常に有用です。
ワクチンによって作られた抗体は、末梢血管から子宮頚管粘液に染み出て、ウイルスを最前線で迎え撃ちにします。
その結果、HPV16・18型に有効な2価ワクチン(サーバリックス)や4価ワクチン(ガーダシル)では、子宮頚がんのリスクを約70%減らすことができます。
ちなみに、HPV16・18型の他、5種類のハイリスクHPVにも効果のある9価ワクチン(シルガード9)は約90%もリスクを減らすことができます。

 

HPVワクチンを規定の3回接種すると、免疫力が非常に高くなります。
そして、少なくとも14年以上、子宮頚部病変を予防し続けます。
特に性交未経験者は、HPVワクチン接種を前向きにご検討下さい。