院長コラム

“HPVワクチン接種”と“子宮頚がん検診”で子宮頚がんを予防しましょう

2020年7月10日、日本産科婦人科学会から一般の方々向けに「子宮頚がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」という情報が公開されました(HPV:ヒトパピローマウイルス)。
今回はその内容を参考に、「HPV感染と子宮頚がん」について情報を共有したいと思います。

 

日本における子宮頚がんの最近の動向

子宮頚がんは年間約10,000人が罹患し、約2,800人が死亡しており、患者数・死亡者数ともに増加傾向にあります。特に50歳未満の若い世代での罹患が増加しており、39歳以下で年間150人、44歳以下で300人の女性が子宮頚がんにより亡くなっています。

一方、海外では子宮頚がん検診とHPVワクチン接種の普及により、子宮頚がんによる死亡者数は減少し、罹患者も低下傾向にあるようです。

また、わが国の75歳未満年齢調整死亡率の10年間の変化を集計したところ、肝臓がん、胃がん、大腸がん、肺がんが減少している一方で、子宮頚がんは2005~2015年で9.6%も死亡率が増加している、とのことです。

 

 

HPV感染から子宮頚がんの発生までの過程

子宮頚がんの95%以上はHPV感染が原因であり、性交などで感染します。HPVは200種類以上のタイプがありますが、そのうちハイリスクHPVといわれる約13種類のタイプは、発がん性が高いため注意が必要です。

子宮頚部の細胞にハイリスクHPVの感染が持続すると、そのうち約10%の女性は子宮頚部の軽度な細胞異常(軽度異形成)を発病します。その一部は中等度異形成となり、さらにその一部は前がん病変である高度異形成に進行します。その段階までに適切な治療をしないと、子宮頚がん(浸潤がん)へ進行する可能性があります。

ちなみに、HPV感染から子宮頚がんに進行するまでは数年~数十年かかり、軽度異形成から子宮頚がんとなる確率は1/100程度といわれています。

 

 

子宮頚がんの予防策

日本のデータによると、子宮頚がんの60~70%は、ハイリスクHPVのうちHPV16型とHPV18型の2つのタイプが原因であることがわかっています。この二つのタイプは特に発がん性が高く、どちらかのウイルスに感染している女性が子宮頚がんになる危険度は、感染していない女性の200~400倍といわれています。

つまり、子宮頚がんを予防するためには、HPV16型とHPV18型の感染を防ぐことが最も効果的である、といえます。現在わが国で認可されている2種類のワクチン(「ガーダシル」「サーバリックス」)はともに、この2つのタイプに対して有効なワクチンです。したがって、できれば性交を経験する前に、これらのHPVワクチンを接種することを強くお勧めします。

ただし、子宮頚がんの30%程度はHPV16型とHPV18型以外のタイプであるため、現行のワクチンのみでは100%子宮頚がんを防ぐことはできません。そこで、子宮頚部異常細胞の早期発見のためには、定期的な子宮頚がん検診(子宮頚部細胞診)が欠かせません。

以上から、HPVワクチン接種(一次予防)と子宮頚がん検診(二次予防)を組み合わせることが、子宮頚がんの罹患者と死亡者を減らす上で必要不可欠です。

 

 

当院では積極的に、HPVワクチン接種と子宮頚がん検診を勧めています。
世田谷区在住の小学校6年生相当から高校1年生相当の女子は、HPVワクチンを無料で接種できます。世田谷区保健所のホームページでご確認下さい。
また、世田谷区民の20歳以上の女性は子宮頚がん検診が800円で受けられます。性交経験のある方は、2年に1度を目安に検診を受けましょう。