院長コラム

20代女性に“梅毒”が広がっています

日本では、1990年以降梅毒の患者さんは年間1000人を下回っていましたが、2013年から増加し、2015年には3000人弱、2017年には6000人近くまで増加しています。
以前は、ほとんど男性患者さんでしたが、2014年頃から女性も増加し、特に20代女性が急増しています。
また、妊婦から胎児に感染する「先天梅毒」も増加傾向にあります。
先月、日本感染症学会は「梅毒診療ガイド」を公表するなど、今“梅毒”が注目されています。
今回は、梅毒の症状・治療などを説明致します。

 

 

感染原因・経路

一般には性行為(オーラルセックスやアナルセックスも含む)により、「梅毒トレポネーマ」という梅毒菌が皮膚・粘膜の小さなキズから侵入することで感染します。

また、妊婦から胎児に感染するケースを垂直感染といい、梅毒菌が胎盤を通して胎児に移行します。

 

 

症状と検査

(1) 第1潜伏期

梅毒男性との性行為後3-4週間は、全く自覚症状がなく、血液検査でも陽性になりません。この期間は、第1潜伏期と言われています。

(2) 感染機会から3-4週間後の症状

感染機会から3-4週間後(平均24日)、大陰唇・小陰唇、クリトリス周囲、尿道口周囲、あるいは口唇など、梅毒菌が最初に入った場所に、小さくて硬めの発疹(初期硬結)や表皮が剥がれて潰瘍となった病変(硬性下疳)が見られます。

しかし、通常は痛みを伴わないため、見過ごされてしまうことも多く、放置しても2-3週間で皮疹は消退します。

診断には、主に2種類の血液検査を用いますが、感染から4~6週以降であれば2種類とも陽性となり、梅毒と診断できます。

(3) 第2期潜伏期

初期の皮疹が消失した後、約1-2ヶ月間(平均48日間)は再び無症状となります。この期間を第2潜伏期といいます。

(4) 感染機会から3ヵ月後

感染機会から約3ヶ月も経過すると、梅毒菌は血流に乗って全身に撒き散らされます。その結果、発熱、頭痛などの前駆症状に引き続いて、多彩な発疹が出現します。

 

 

治療法

第1選択はペニシリンの内服薬であり、数週間の服薬が必要です。
ペニシリンアレルギーの方には、一般的にミノサイクリンという抗生剤を用いますが、妊婦さんの場合はスピラマイシンという、胎児への影響がほとんどない抗生剤を使用します。

 

 

必ずしもコンドームで全て予防できるとはいえませんが、妊娠を希望しない場合、男性には必ずコンドームを使用してもらいましょう。
また、妊娠初期の血液検査の項目には梅毒検査が入っていますが、ご希望の方には、結婚前のブライダルチェックで梅毒検査を行うこともできますので、是非ご相談下さい。