院長コラム

黄体ホルモン製剤「ディナゲスト錠」服用に伴う不正出血への対応

子宮内膜症の治療に用いる「ディナゲスト錠1.0㎎」、月経困難症治療剤である「ディナゲスト錠0.5㎎」は非常に有用な黄体ホルモン製剤です。
ただし、副作用として不正出血がみられることが知られています。
今回は、「女性内分泌クリニカルクエスチョン90」(診断と治療社)などを参考に、「ディナゲスト錠」服用に伴う不正出血への対応について説明します。

 

服用期間が長くなると不正出血は減少

黄体ホルモンは子宮内膜を薄くさせる作用がありますが、内膜を剥がれやすくしてしまうともいえます。
ある報告によると、「ディナゲスト錠1.0㎎」を1日2錠服用する場合、性器出血の発現日数の平均(4週間あたり)は、投与8週で約19日であったそうです。しかし、24週では約11日、52週では約6日にまで減少しました。
また、通常の月経程度以上の出血をきたす割合も、投与8週では約33%でしたが、24週では約18%、52週では約4%にまで減少したとのことです。
つまり、ディナゲスト錠の服用期間が長くなるにしたがって、不正出血は減少するといえます。

 

出血に対する薬物療法

出血が少量であれば経過観察することが多いですが、月経程度の出血が持続する場合には、アドナ錠(90㎎/日)・トランサミン錠(1500㎎/日)といった止血剤を数日服用して頂くことがあります。
また、少量であっても長期にわたり出血が持続する場合は、「キュウキキョウガイトウ」という止血作用のある漢方薬を用いることもあります(痔出血に保険適応)。
出血がかなり多量になった場合は、多量のトランサミン錠(3000㎎/日)を3日間ほど服用頂き、止血を試みます。
それでも出血が持続する場合には、子宮内膜をあえて厚くさせることで一時的に出血を抑えることを目的に、エストロゲンと黄体ホルモンの配合薬である中等量ピル(プラノバール錠)を1日1錠7~10日間処方することがあります。中等量ピル服薬終了後、休薬するとしばらくして出血が起こり、その後ディナゲスト錠を再開します。

 

ディナゲスト錠による不正出血を予防するため、ディナゲスト錠服用前に4~6か月間偽閉経療法(リュープロレリン1.88㎎皮下注など)を行うこともあります。
あらかじめ偽閉経療法を行うことで、ディナゲスト錠服用開始6か月までの不正出血を減少させることが知られています。
特に、子宮腺筋症の方は出血が多くなる傾向があるため、この方法は非常に有用と思われます。