院長コラム

痛みを伴う子宮内膜症の管理

2021年に「子宮内膜症取り扱い規約」が改訂されました。この規約は、臨床医が治療方針を決めるのに非常に重要なものです。
今回、「日本女性医学学会雑誌 2023年4月号」を参考に、当院における痛みを伴う子宮内膜症の管理について説明します。

 

今、妊娠の希望がある方

現在妊娠を希望している方の場合、子宮内膜症の所見があまり強くなければ、鎮痛剤や漢方薬などの対処療法を行います。
ただし、疼痛が強い場合、子宮内膜症性の卵巣のう胞(卵巣チョコレートのう胞)が大きい方や、高年齢(36歳以上)の方などは、子宮内膜症が不妊の原因になっている可能性もあるため、不妊専門施設へ紹介致します。

 

将来的に妊娠を希望される方

卵巣チョコレートのう胞が大きい方や悪性腫瘍が疑われる方には、近隣の高次施設へ紹介します。
それ以外の方に対しては、まずは対処療法を行い、症状や検査所見によっては更にホルモン療法を行います。ホルモン療法として、「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)」「黄体ホルモン製剤(ディナゲスト錠)」(1回/日)を処方します。
当院では、まずLEP(ヤーズフレックス錠、ジェミーナ錠)の連続投与を行うことが多く、LEPの効果が不良の方やLEPが禁忌の方に対してはディナゲスト1.0㎎錠(2回/日)を使用しています。
それでも症状が改善しない場合は、偽閉経療法としてレルミナ錠(1回/日内服)またはリュープロレリン1.88皮下注(1回/月)を4~6か月間行うこともあります。
その後、再発予防のためLEPやディナゲスト錠へ切り替え、妊娠希望まで経過観察を続けます。

 

将来的にも妊娠希望がない方

大きな卵巣チョコレートのう胞の方や大きな子宮筋腫を合併している方など、明らかに手術療法が望ましい場合は、対症療法を行いながら高次施設に紹介します。
そうでない方や手術を希望されない方へは、ホルモン療法を行います。当院では、特に50歳前後の方には偽閉経療法を選択し、治療後の自然閉経への“逃げ込み”を期待することがあります。

 

当院では積極的な不妊治療を行っていないため、妊娠希望のある方は、早い段階で不妊専門施設へ紹介することがあります。
また、他施設で手術療法を行い、その後再発防止のためにホルモン療法をされている方は、当院で治療を引き継ぐことが可能な場合があります。
尚、健診などで子宮内膜症と診断されたものの、まだ婦人科を受診されていない方は、是非早めに近隣の産婦人科クリニックを受診しましょう。