院長コラム

疲労感に対する漢方療法

先日、慶應義塾大学病院の漢方専門医の先生によるリモート講演会があり、多くの事を学ばせて頂きました。
今回は、講演会の内容を参考に、疲労感に対する漢方療法について情報を共有したいと思います。

 

スマホによる目の疲れに「八味地黄丸(ハチミジオウガン)」

八味地黄丸は、下肢脱力感、疲労感、足腰の冷え、夜間頻尿など、老化に伴う症状に用いることが多い漢方薬です。
そのため、“漢方薬のアンチエイジング剤”との異名があり、比較的高齢の方に使用するイメージがあります。
ただし、昨今急増している「スマホの画面を見過ぎることによる疲労感」にも有用とのことです。
ちなみに、八味地黄丸の強力バージョンといわれる「牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)」は「高齢者のかすみ目」にも保険適応があります。

 

抑うつ・不安感など精神症状のある疲労感に「加味帰脾湯(カミキヒトウ)」

加味帰脾湯は、精神安定作用を有する生薬と元気を出させる生薬を含んでいます。そのため、精神症状のため不眠に悩まれている方に対して、元気を出させるための漢方薬として、加味帰脾湯はよく用いられています。
尚、更年期障害や月経前症候群にみられる揺れ動く精神症状に対して、「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」は非常に有用ですが、抑うつ・不安感が継続する場合は、加味帰脾湯に切り替えることもあります。

 

仕事を頑張り過ぎて休日にやる気が起きない方には「補中益気湯(ホチュウエッキトウ)」

補中益気湯は“元気を出させる”漢方薬の中でも代表的なものです。
日中は仕事を頑張り過ぎてしまい、仕事が終わってからの時間や休日に、疲れがどっと出てしまう方に、補中益気湯が有用とのことです。
もし、現在食欲が出なくても、補中益気湯により胃腸が回復し、美味しいものを食べに出かけられる様になるかも知れません。

 

上記以外にも、疲労感に対して「十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)「人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)」」などを処方することもあります。
ただし、漢方薬はあくまでもサポートです。
バランスのとれた食事・適切な運動・良質な睡眠が、疲れない身体作りには不可欠ですので、是非生活習慣を改善しましょう。