院長コラム

産科医療補償制度および医療安全について ~日本女性医学学会学術集会の報告(1)~

先日、福岡で開催されました日本女性医学学会学術集会へ参加して参りました。限られた時間ではありましたが、多くの学びがあった有意義な学会でした。皆様にも共有したい情報がありましたので、3回に分けてお伝えしたいと思います。
今回は産科医療補償制度のお話や当院の医療安全への取り組みについて説明します。

 

 

産科医療補償制度の目的について

2009年1月、日本医療機能評価機構は産科医療保障制度を設立しました。この制度は、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児とその家族の経済的負担を速やかに保証することを目的にしています。
さらに、脳性麻痺発症の原因分析を行い、同じような事例の再発防止に資する情報を提供することにより、産科医療の質の向上を図ることも目指しています。

今回の学術講演会では、日本医療機能評価機構の理事でいらっしゃる九州大学の先生から、「分娩に関連した脳性麻痺の発生は、世界的にも非常に大きな問題となっており、日本での産科医療補償制度という取り組みが、海外でも大変注目されている」というお話を伺いました。

 

 

当院における医療安全の取り組み

(1)母児の安全に向けて

当院では母児の安全のために、
①医療従事者のレベル向上(特に胎児心拍数陣痛図の正しい評価と判断)
②高次施設との連携の充実
の2点に力を入れています。
院内勉強会では、定期的に胎児心拍数陣痛図の見方についてスタッフで検討を行なっております。
また、高次施設、特に東京医療センター、国立成育医療研究センター、日赤医療センター、昭和大学病院、慶応義塾大学病院などの施設とは、顔の見える病診連携の更なる充実に心掛けています。

 

(2)被験者への検査結果説明

検査結果が正しく被験者の説明されていなかったために、重篤な状況に進展しまった国内外で事例についても、演者の先生からお話がありました。このことは医療安全上、非常に重大な問題であり、多くの施設でミスの起こらない対策が検討されているようです。当院でも以下のような取り組みをしています。

1. 検査結果が送られてきた時点で、事務スタッフがすぐにそれを電子カルテにスキャンします。院長は結果と方針を電子カルテに記載し、次回外来での結果の見落としを防ぎます。

2. 検査結果の説明は、原則として電話や郵送では行なわず、必ずご本人と対面してお話し、その際にはお名前を確認します。説明後、検査結果のデータは全てご本人にお渡ししております。

3. 各種検査結果から、早めの精査や再検、高次施設への紹介が必要と判断した場合は、直ちに電話や郵便などでご本人へご報告しています。個人情報の扱いには十分に注意しておりますが、ご本人の健康を守るための対応を最優先しておりますこと、ご了承下さい。

 

 

医療安全への取り組みには終わりがありません。
「人はミスを犯すもの」という原則を謙虚に受け止め、スタッフ1人ひとりが更なる技術・知識・意識の向上を図るとともに、院内外のシステムの改善に今後も取り組んで参ります。