院長コラム

機能性月経困難症の特徴と治療法

月経困難症とは「月経に随伴して起こる病的状態」と定義されています。症状は、下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労感、イライラ感、下痢、抑うつなどがみられます。
ある報告によると、性成熟女性の3人に1人は鎮痛剤を要するほどの月経困難症に悩まされているとのことです。さらに、わが国の女子高生を対象とした調査では、90%以上に月経困難症がみられ、半数以上が月経困難症のために日常生活に支障をきたしているようです。
今回は、「女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編2016年度版」を参考に、若年者に多い機能性月経困難症の特徴と対応について説明します。

 

機能性月経困難症とは

子宮内膜症・子宮腺筋症といった病気(器質的疾患)を認めないものを機能性月経困難症といいます。
初経後2~3年より始まることが多く、好発年齢は15~25歳前後とされています。また、加齢とともに改善することが多く、お産後に改善するといわれています。
ただし、若年で機能性月経困難症が強い方は、将来子宮内膜症になりやすいことが知られており、最近では10代での子宮内膜症が増えているようです。

 

機能性月経困難症の症状と原因

機能性月経困難症の症状は月経1~2日目頃の経血が多い時に起こり、4~48時間程度持続します。
月経前に「プロスタグランディン(PG)」という“筋肉を収縮させて、痛みの原因となる物質”が子宮内膜から分泌されますが、機能性月経困難症の方はPG分泌量が多いといわれています。
また、子宮発育が未熟な思春期女性や、子宮の前屈・後屈が強い方も月経痛が起こりやすいようです。
尚、15歳未満の若年者の場合、月経に対する不安などの心理的要素も指摘されているため、ご本人に対しては「月経自体は健康な女性の毎月の経験である」ことをご理解頂くと同時に、お母様に対しては、お嬢様と月経についてお話し合いされることをお勧めします。

 

機能性月経困難症の治療

機能性月経困難症はPGが関与しているため、子宮内膜がPGを産生する前、つまり月経開始日の数日前~前日から、PGの合成を阻害する「消炎鎮痛剤」を服用することが有効です。
また、PGの産生を抑制するため、子宮内膜組織の増殖自体を抑え込む「低用量ピル(ヤーズフレックス錠、ジェミーナ錠など)」「黄体ホルモン製剤(ディナゲスト錠0.5㎎)」も現在治療の主流になっています。
その他当院では、筋肉の緊張をほぐす「鎮痙薬(ブスコパン錠)」、筋肉の緊張緩和や血行改善効果のある「漢方薬(芍薬甘草湯・当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸など)」を併用することも少なくありません。

 

4月からの新生活に向けて、期待に胸を膨らませている中高生・大学生・新社会人の方の中には、月経トラブルが悩みの種である方も多いかもしれません。
月経困難症は、学業・部活・仕事・人間関係そして恋愛にも悪影響を及ぼしかねません。
辛い症状を我慢せずに、是非婦人科を受診し、ご相談下さい。