院長コラム

梅毒患者さん急増!感染予防に心掛けましょう

2010年に全国で約620名(男性約500名・女性約120名)であった梅毒患者報告数は、2018年には7000名(男性約4600名・女性約2400名)となり、8年間で10倍以上増加しています。特に、男性が10倍の増加であるのに対し、女性は20倍もの増加を示しています。
今回は、「日本産科婦人科学会誌 2019年11月号」の記事を参考に、梅毒予防について説明します。

 

 

若年女性患者さんの急増

2014年から若年女性の梅毒患者さんが急増しており、特に20~24歳の増加が最も多くなっています。次に25~29歳で増加率が高いのですが、15~19歳の未成年の患者さんが増えていることが大きな問題です。

10代後半から20代女性に梅毒患者さんが増加すると、治療せずに妊娠してしまう妊婦さんも増えることが考えられます。妊娠初期には全ての施設で梅毒検査を行なうため、陽性となれば経口合成ペニシリン系による抗生剤の服用を開始します。しかし、妊娠していることに気が付かない方や、気付いていても様々な理由で妊婦健診を受けない方も少なからずいらっしゃいます。その際に懸念されるのが赤ちゃんへの梅毒感染、つまり先天梅毒です。

 

 

先天梅毒の増加

2013年までは先天梅毒の報告数は4~5例で推移していましたが、2014年で10例、2016年には14例と報告されています。先天梅毒では胎児死亡や早産、発育不全などの可能性があるため、遅くとも妊娠初期に発見し、治療を開始する必要があります。

先天梅毒を防ぐためには、「そもそも梅毒感染を予防すること」「予期しない妊娠を防ぐこと」「妊娠の可能性があれば妊婦健診を受けること」の三つが大切です。

 

 

コンドーム・経口避妊薬・妊婦健診

全ての性感染症を100%防ぐには、あらゆる性行為をもたないことです。性行為を行なうならば、オーラルセックスを含めてコンドームを使用することが必須です。現時点で最も性感染症予防の効果が高いものは、男性が適切に装着するコンドームです。

ただし、コンドームは確実な避妊法とはいえません。妊娠を避けるためには、性交しないか、経口避妊薬(OC)または低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)を服用しましょう。

もし、妊娠の可能性がある場合、つまりOC・LEPを服用せずにセックスし、いつも月経が順調であるのに予定月経日になってもこない場合、あるいは、いつも月経は順調ではなく、セックスの後2週間以上たっても月経がこない場合は、産婦人科を受診しましょう。妊娠の有無はもちろん、子宮以外での妊娠の可能性や妊娠週数についても知ることができます。もし、子宮内での妊娠が確認されれば、定期的に妊婦健診を受診し、妊娠初期には梅毒検査をはじめとする各種血液検査などを受けるようにしましょう。

 

 

10~20代女性の中でも、特に梅毒感染の危険にさらされているのは性産業従事者の女性です。梅毒患者さんは日本だけでなく中国やアメリカをはじめ、世界で増加しています。当然、海外から日本に訪れる旅行者も梅毒に感染している方が増えていると思われますし、多勢の男性の梅毒患者さんが性風俗店を訪れることが予想されます。
性風俗店のお客さんは全て、梅毒をはじめ性感染症の患者さんだと思って対応しましょう。
そのことが、自分自身と将来のお子さんを守ることに繋がると思います。