院長コラム

東京都の「周産期搬送ルール」について

東京都では周産期における母体搬送や新生児搬送を「周産期搬送ルール」に基づいて行っています。
都内の分娩を取り扱っている中小施設と周産期センターとの連携をスムースにし、母体・胎児・新生児の生命・健康を守る、大変重要で有難い取り組みです。
今回は「東京都の周産期搬送3つのルール」について、当院の観点からご紹介します。

 

 

【1】母体救命搬送システム(スーパー母体搬送)

胎児の緊急性は問わず、以下の疾患などにより、緊急に母体救命処置が必要なケースが対象になります。

(1)妊産褥婦の緊急疾患合併

  脳血管障害(脳出血や脳梗塞など)
  急性心筋梗塞(心筋梗塞、心不全など)
  呼吸不全(肺血栓塞栓症、重症気管支喘息など)
  重症外傷(交通事故など)・熱傷など

(2)重症な産科救急疾患

  羊水塞栓症
  子癇・妊娠高血圧症候群(重症)
  出血性ショックなど

(3)診断は確定しないが重篤な症状

   意識障害・痙攣発作・激しい頭痛・激しい胸痛・激しい腹痛など

以上のケースでは、当院から119番に電話し、「スーパー母体搬送」を依頼します。

ちなみに、現在スーパー母体搬送の受け入れ施設は、当院に比較的近い「日赤医療センター(渋谷区)」「昭和大学病院(品川区)」がありますが、場合によっては「日本大学板橋病院(板橋区)」「都立墨東病院(墨田区)」「都立多摩総合医療センター(府中市)」「杏林大学病院(三鷹市)」まで搬送される可能性もあります。

「スーパー母体搬送」の依頼と同時に、個人的に連携を取っている「東京医療センター」、「国立成育医療研究センター」、「慶応義塾大学病院」などへも受け入れ要請のお願いをします。

当院でも、今までこのシステムを利用したケースがありますが、すべて「日赤医療センター」、「昭和大学病院」、「東京医療センター」、「国立成育医療研究センター」に受け入れて頂いています。

 

 

【2】胎児救急搬送システム

母体の重症度は低いですが、胎児の緊急性が高い以下のケースが対象になります。

(1)常位胎盤早期剥離及びその疑いがある場合

(2)妊娠37週未満で胎児機能不全の徴候がある場合

このようなケースでは、当院から119番に連絡し、「胎児救急搬送システム」に則った母体搬送を依頼します。

当院では、今までこのようなケースはあまり多くはありませんが、「日赤医療センター」、「国立成育医療研究センター」に受入れて頂いています。

 

 

【3】上記を除く母体・新生児搬送

切迫早産、通常の分娩停止、緊急性はないものの高次施設での管理が望ましい合併症、生まれた後の新生児のトラブルなどは、当院から直接近隣の高次施設に受け入れ要請のお願いをします。

今までのほとんどのケースで「日赤医療センター」、「昭和大学病院」、「東京医療センター」、「国立成育医療研究センター」の産婦人科または新生児科に受け入れて頂いています。

 

 

10年前と比べると、高次施設への救急搬送はシステム化されたため、比較的円滑に連携が取れていると思います。
これからも各周産期センターおよび東京都行政と協力し、母児の安全を第一に考え、周産期医療に携わって参ります。