院長コラム

有酸素運動とHRTで動脈機能の改善を

閉経後女性は卵巣機能低下に伴うストロゲン欠乏や加齢により、動脈硬化が加速することが知られています。
一方、有酸素運動を含む身体活動により、動脈硬化の進行が抑制されると言われています。
今回は、「産科と婦人科 2026年5月号」を参考に、有酸素運動とエストロゲン投与による動脈機能の改善効果について情報共有致します。

動脈硬化を促進させる要因
動脈の内側にある内膜には、血管内皮細胞という細胞が存在しており、動脈硬化を予防する様々な物質を産生しています。
その一つである一酸化窒素(NO)は血管弛緩作用、抗炎症作用、抗血小板凝集作用、酸化ストレスの抑制など、多くの働きを担っています。
ところが、加齢、喫煙、肥満、糖代謝異常、そして閉経後のエストロゲン欠乏、運動不足によって血管内皮細胞の機能が低下するとNO賛成が低下し、動脈硬化になるリスクが高まります。

エストロゲンの補充によりNO産生がアップ
エストロゲンは全身にある受け皿(受容体)に結びつく事で、様々な効果を発揮しますが、実は血管内皮細胞にもエストロゲン受容体が存在しています。
閉経後の女性に対して行われるホルモン補充療法(HRT)によりエストロゲンが受容体にくっつくと、NOの産生が亢進し、血管の保護作用を発揮します。
また、エストロゲンは動脈の進展性を増大させるとの報告もあり、まだ見解は一致していませんが、条件によってはHRTにより動脈の進展性が改善することも期待できます。

HRTと有酸素運動の組み合わせで動脈機能の改善が期待 
有酸素運動も血管内皮の機能を向上させ、NO産生をアップすることが知れています
ただし、閉経後女性が有酸素運動のみを行っても、血管内皮機能の向上は限定的のようです。
しかし、HRTを受けている女性が有酸素運動を行うと、運動習慣のない若年女性と同等の“動脈のしなやかさ”を手に入れる事ができる、との報告があります。

閉経後女性が動脈硬化を予防するためには、禁忌でないのであれば適切な「HRT」+「有酸素運動」が望ましいと考えられます。
また、大豆イソフラボンのサプリメント「エクオール」にも、有酸素運動による動脈機能の改善効果を増強する可能性があるそうです。
閉経後女性が健康寿命を延ばす上で、「有酸素運動を含む生活習慣の改善」と「HRTやエクオール摂取」を組み合わせる事が有用であるかも知れません。