院長コラム

月経困難症治療剤「ディナゲスト錠0.5㎎」による不正性器出血

黄体ホルモン製剤である「ディナゲスト錠0.5㎎」は月経困難症の治療に用いられ、その高い有効性が知られています。
ただし、服用者の90%以上の方に、副作用として不正性器出血がみられるともいわれています。
今回は、「ディナゲスト錠0.5㎎」による不正性器出血について説明します。

 

通常の月経周期の流れ

月経終了後、脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)の影響で、卵胞からエストロゲンが分泌されます。
エストロゲンは子宮内膜を増殖させる働きがあり、月経で剥がれ落ちた内膜が肥厚し始めます。
卵胞が発育し、エストロゲン分泌が上昇すると、脳下垂体から黄体化ホルモン(LH)が分泌され、その影響で成熟した卵胞が破れて排卵します。
排卵後の卵胞は黄体となり、黄体ホルモンが分泌されます。黄体ホルモンは、子宮内膜組織の増殖を抑え、受精卵が着床しやすい状況(分泌期状態)に変化させます。
妊娠が成立すれば、エストロゲン、黄体ホルモン共に上昇しますが、妊娠が成立しなければ共に減少し、子宮内膜が剥がれて月経となります。

 

ディナゲスト錠による子宮内膜の変化

ディナゲスト錠は黄体ホルモン製剤であり、子宮内膜増殖を抑制します。
また、脳下垂体からのFSH・LH分泌は抑えられ、卵胞から分泌されるエストロゲンも増加せず、排卵も起きません。そのため、子宮内膜は薄いまま経過します。
ただし、ディナゲスト錠は薄いままの内膜に対しても、分泌期状態にしようと働きかけてしまい、その刺激によって内膜が不定期に剥がれてしまい、出血することとなります。
これが、ディナゲスト錠による不正性器出血の原因と考えられています。

 

ディナゲストによる不正性器出血とその対策

ある報告によると、ディナゲスト錠0.5㎎投与8週間後には約2週間の不正出血が認められるものの、その後は次第に出血日数が短くなるとのことです。
また、通常の月経程度以上の出血がみられる割合は、投与8週間後約25%でしたが、半年後は約15%、1年後には10%以下にまで低下するそうです。
当院では、性器出血が日常生活に支障をきたす場合には、止血剤の屯用、止血効果のある漢方薬の併用、ディナゲスト錠の周期的投与などで対応しています。
ただし、飲み忘れで出血をきたす方もいらっしゃいますので、1日2回の服薬は続けて頂くよう、宜しくお願い致します。

 

ディナゲスト錠は、血栓症といった大きな副作用がなく、思春期から閉経期まで多くの女性に服用して頂けます。
不正性器出血は一時的な副作用であり、長期間服用すればするほど、出血は減少して参ります。
出血への対応策もありますので、できるだけ服用を継続されることをお勧めします。