院長コラム

月経前症候群(PMS)に用いる漢方薬

月経が始まる3~10日前から現れる様々な精神的・身体的症状を月経前症候群(PMS)といい、生殖年齢女性の20~30%にみられると言われています。
産婦人科外来での治療として、低用量ピル・漢方薬・抗うつ薬(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を用いる事が多く、中でも漢方薬は比較的患者さんが受け入れやすい薬物と思われます。
今回は、「産科と婦人科 2024年8月号」を参考に、PMS治療に使用されることの多い漢方薬について、情報共有したいと思います。

不安感・情緒不安定:加味逍遙散
月経前に気分の浮き沈み、気分がゆらゆらと揺らぐ症状がみられる方は少なくありません。
そのような不安感が強く、情緒が不安定な方には「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」が有用であると言われています。
夜間目が覚めてしまう方、夢をたくさん見る方に対して、睡眠の質を改善する効果も期待できるようです。
当院では、精神症状が強いPMSの方に処方することが最も多い製剤であり、周期的あるいは連続的に服用して頂いています。

抑うつ傾向:半夏厚朴湯
月経前のうつ症状が強い場合にはSSRIを処方することもありますが、漢方薬では「半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)」が有用であると言われています。
特に、のどの詰まり感、悪心嘔吐、胃部膨満感など上部消化管の症状がみられる方に効果があります。
当院でも、抑うつ傾向が強い方には、第一選択として処方することがあります。

イライラ・怒りっぽい・不眠:抑肝散
PMSの代表的な症状に、イライラや易怒がありますが、感情をコントロールする働きに優れている「抑肝散(ヨクカンサン)」が有用です。
また、緊張が強く、夜眠れない方にも効果を発揮します。
当院では、イライラしそうな時に抑肝散を頓服して頂く事が多く、長期間にわたり服用が望ましい方や胃腸が弱い方には、健胃作用の生薬が配合されている「抑肝散加陳皮(ヨクカンサンカチンピハンゲ)」を使用しています。

その他、血行不良で月経困難症もみられる場合は「桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)」、不安感に加えて倦怠感が強い場合には「加味帰脾湯(カミキヒトウ)」を使用することもあります。
当院では、1~3か月服用して頂き、症状の改善具合を評価した上で、他の製剤への切り替えや、低用量ピルあるいはSSRIの併用などを検討することがあります。
PMSは生活の質を著しく下げますので、我慢せずに婦人科クリニックを受診されることをお勧めします。