院長コラム

月経前症候群(PMS)は“自分の弱み”のサイン

排卵後から月経前の(定義では月経開始の3~10日前から始まる)様々な心身の不調をPMSといい、毎月悩まれている方も少なくありません。
その原因として、排卵後に分泌される黄体ホルモンの影響、月経前のエストロゲンの減少など、様々な要因が絡み合っていると考えられています。
今回、とある学会でPMSについて学ぶ機会がありましたので、PMSへの対処法の一部について情報共有致します。

健康の土台を整えよう
PMSの対処法として、まずは食事・運動・睡眠といった生活習慣を整えることが基本になります。というのも、PMSにみられる精神症状や身体症状は、女性ホルモンの変化や環境の影響によって、ご自身の弱点が“あらわ”になってしまった結果、とも考えられるからです。
生活習慣の中でも食生活を見直すことが重要で、タンパク質・鉄・マグネシウム・亜鉛・ビタミンB群・ビタミンDをはじめ、その他ビタミン・ミネラルの摂取が非常に大切である、とのことです。
また、漢方薬もPMSに用いることが多いですが、体質や症状を考慮して、より適切な製剤を臨機応変に使用することが必要です。

女性ホルモンの変動を抑えよう
“月経前”症候群と言われているように、当然女性ホルモンが関与しています。特に、排卵後に分泌される黄体ホルモンと、月経前のエストロゲンの減少に対して、上手く対応しきれない事がPMSを招いている要因と思われます。
そのため、排卵をさせないことで黄体ホルモンの分泌を抑える事と、エストロゲンの血中濃度を安定化させることが重要であり、その意味では低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP:月経困難症の治療薬)の使用は、有用な治療法と思われます。
ただし、LEPに含まれているプロゲスチン(黄体ホルモン成分)のタイプによっては、体質的に合わない方もいらっしゃるので、様々な種類のLEPを試すことが必要になる旨、ご了承下さい。

幸せホルモン「セロトニン」の機能をアップ
PMSの精神症状の要因として、脳内の神経伝達物質「セロトニン」の量や働きが低下する事も指摘されています。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬は、脳内にある“幸せホルモン”セロトニンを減少させる(再び取り込む)機能を妨げる事で、セロトニンを増やす作用があるため、PMS治療薬としては大変有用です。ただし、嘔気嘔吐などの副作用をきたす方も多く、有効性が約50%とも言われているため、経過を見ながら使用する必要があります。
そもそも、生活習慣を整えてセロトニンの産生を増やさないと、いくら再取り込みを阻害しても、十分に脳内のセロトニン量を確保することは難しいのかも知れません。
ちなみに、エストロゲンの減少がセロトニンの作用を低下させると言われており、LEP服用が間接的にセロトニン作用の安定に繋がるとも考えられています。

仏教の考え方に「因果」(原因と結果)と「縁」(因果を結びつける条件など)という考え方があるそうです。
自分の弱点(因)が、黄体ホルモンの分泌・エストロゲンの減少・脳内のセロトニンの減少・心身のストレスなど(縁)がきっかけとなって、PMS(果)として心身症状が表れるのかもしれません(全くの私見)。
当院ではお一人おひとりの症状、体質、背景を考慮しながら、「因」を改善し、「縁」を避ける事で、PMS(果)を予防する最善な指導・治療を心掛けて参ります。